2010 Fiscal Year Annual Research Report
多段階酸化還元系を利用した有機エレクトロクロミズム系の構築
Project/Area Number |
22850007
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
庄子 卓 信州大学, 理学部, 助教 (60581014)
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Keywords | π電子系化合物 / アズレン / エレクトロクロミズム / サクリックボルタンメトリー / 環化付加反応 / カルボカチオン |
Research Abstract |
エレクトロクロミズムは電気化学的な酸化還元により,電子スペクトルが可逆的に変化する酸化還元系で観測される現象である。これまでのアズレン環を利用した有機エレクトロクロミズム系においては生成するラジカルイオン状態の安定性に問題が残り、電気化学的還元条件下においては色調の変化を示すが可逆性の点では課題が残っていた。そこで申請者はより安定な有機エレクトロクロミズム分子の構築を目的とし、酸化還元活性なπ共役系にさらに酸化還元活性な発色団であるアズレン環を複数個配置した新規な酸化還元活性システムの構築を行い、サイクリックボルタンメトリー法やスペクトロエレクトログラムにより有機エレクトロクロミズム能を検討した。これまで我々が実証してきたジ(アズレニル)メチルカチオンの高い安定性を利用し、エレクトロクロミズム系へと展開した。チオフェン環の結合したジ(アズレニル)メチルカチオン種とチオフェン環を挟んだ安定ジカチオン種を合わせて合成することにより、ジカチオン種とモノカチオン種との詳細な比較を行うと共に、生成したジカチオン種が一段階二電子の電子移動により安定化されたエレクトロクロミズム系として機能することを明らかにした(T.Shoji et al. Eur. J. Org. Chem. 2011,584-592.)また、アリールエチニル基の置換した2H-シクロヘプタ[b]フラン-2-オンとテトラシアノエチレンとの形式的な[2+2]環化付加反応を経て、新規なテトラシアノブタジエン(TCBD)誘導体を合成した。これらの化合物がUV/Visスペクトルならびに時間依存密度汎関数法(TD-DFT)による計算によって分子内電荷移動吸収(ICT)を示すことを明らかにした。さらにサイクリックボルタンメトリー(CV)測定において、分子内のTCBD数に比例した電子数の移動を伴う可逆な還元波を示した。また、これらの化合物のエレクトロクロミズム挙動を検討した結果、電気化学的還元条件下で顕著な色調の変化を示すことを明らかにした(T. Shoji et al.Chem. Eur. J. 2011,17,5116-5129.)。
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Research Products
(5 results)