2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22850008
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齊藤 尚平 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 助教 (30580071)
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Keywords | ホウ素 / π電子系 / 速度論的安定化 / 近赤外蛍光 / サーモクロミズム |
Research Abstract |
ホウ素を含むπ共役系は、強い電子受容性やルイス酸性などの電子的な特長をもつことから、有機発光材料、二光子吸収材料、電子輸送材料、化学センサーなどに応用されており、有機エレクトロニクスの分野で有望な化合物群である。ただし、水や酸素に不安定であるという欠点があり、この問題を克服すべく、2つの対策が講じられてきた。即ち、立体的に嵩高い置換基をホウ素周辺に導入することによる速度論的安定化と、ホウ素-炭素結合をホウ素-窒素結合などに置き換える熱力学的な安定化の手法である。しかしながら、前者では置換基の立体障害により固体中で分子間相互作用が妨げられ、高い電子移動度の実現が困難であった。また、後者では、ホウ素の空軌道が、窒素や酸素の孤立電子によって部分的に満たされてしまい、本来の含ホウ素π電子系の魅力的な物性が引き出せないというジレンマがあった。今回我々は、新しい安定な含ホウ素π電子系として、3配位ホウ素を縮合多環式π電子系の中央に閉じ込めた分子を開発することに成功した。従来にはなかった速度論的安定化の手法として、ホウ素周りのアリール基を全て縮環して平面構造に固定するという方法を見出した。実際にこの化合物は水や酸素、シリカゲルに対しても高い化学的安定性を示した。この含ホウ素π共役分子は、以前我々が報告したメチレン架橋トリフェニルボランと異なり、分子間の立体障害を生じない広いπ共役平面をもつことから、固体中で効果的なπスタッキングの形成が可能であり、今後高効率電子輸送材料としての応用が期待できる。また、高い電子供与性をもつπ電子骨格と電子受容性をもつホウ素が軌道相互作用することで、HOMO-LUMOギャップが狭く、可視領域全体にわたる吸収と近赤外領域に至る蛍光特性を示した。さらに、平面固定化によるルイス酸性の低さを利用して、ルイス塩基存在下でのサーモクロミズムにも成功した。
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