2010 Fiscal Year Annual Research Report
超臨界二酸化炭素中における高選択性不斉光反応の創成
Project/Area Number |
22850011
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
西山 靖浩 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 研究員 (00581430)
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Keywords | 超臨界二酸化炭素 / 有機光化学 / クラスタリング / エントレーナー / 環境調和型プロセス |
Research Abstract |
申請者はこれまでに、超臨界二酸化炭素(scCO_2)を用いた不斉光反応において、反応に関与しない有機溶媒を補助溶媒(エントレーナー)として加えると、scCO_2中のみならず有機溶媒中よりも高い選択性を与えることを明らかにしてきた。一方で、この補助溶媒はジエチルエーテル且つ一つの濃度しか検討しておらず、詳細は未解明であった。そこで本年度はscCO_2に添加するエントレーナーの種類、濃度について詳細な検討を行った。また、有機溶媒中での補助溶媒の結果と比較検討するため選択的溶媒和の検討も行った。まず、有機溶媒中での選択的溶媒和の検討において、分光測定により極性溶媒を添加していくことで、増感剤、励起錯体周囲の微視的極性も高極性になっていることが観測された。この反応は分極している励起錯体を経由しているため、高極性溶媒であるアセトニトリル中では溶媒により乖離したイオンペアとなってしまうため、ほぼラセミ体しか与えないことが明らかとなっている。選択的溶媒和の光反応結果では、微視的極性の増大により、不斉収率の低下が観測された。一方、scCO_2中のエントレーナーとしてアセトニトリルを加えると、選択的溶媒和の結果とは全く異なり、不斉収率の向上が観測された。さらに、クラスタリング効果が強い臨界点近傍では、エントレーナー濃度が濃いほど高い選択性を与えたのに対し、クラスタリング効果が比較的弱い超臨界状態では、通常の選択的溶媒和と同様に、極性の高い溶媒の濃度が濃いほど、選択性向上の程度が低いことが明らかとなった。scCO_2中での分光測定では、選択的溶媒和と同様に、エントレーナー添加により、微視的極性の増大が観測されたことから、エントレーナーを添加することにより極性が上がっているにも関わらず、scCO_2特有のクラスタリング効果により、励起錯体の乖離が抑制され、高い選択性が達成されたことが分かった。
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