2011 Fiscal Year Annual Research Report
巨大ナノクラスターのゲル電気泳動法による分離手法開発
Project/Area Number |
22850013
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
綱島 亮 山口大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (70466431)
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Keywords | ポリ酸 |
Research Abstract |
POMクラスターは6から368個の遷移金属が酸素で架橋された分子性金属酸化物である。触媒として広く用いられている他、光材料・エレクトロニクス・医薬などの様々な分野でインパクトの高い研究が行われつづけている。一方、POMクラスターは有機分子の様に、合成実験の範疇で行える抽出やクロマトグラフィーによる分離手法に乏しく、結晶化が主な手法である。 本提案により、この確率的要素を含む"結晶化"に代わりうる、積極的な材料開発を可能にする分離手法として"ゲル電気泳動"が有用である知見を得た。サイズ・形状・組成に応じたクラスター分離がある程度可能であることを明らかにした。加えて、ゲル電気泳動を用いて、クラスター形成過程をクロマトグラフィー的に評価し、次のことを明らかにすることが出来た。 Na2Mo04に、還元剤Na2S204(0.07等量対Na2Mo04)と塩酸を反応させると二日後に{Mo154}が単結晶として沈殿する。還元剤を加えない場合{Mo36}が得られる。そこで、同反応系について還元剤量を0.02から1.7等量まで変化させ、2日後に得られる化合物の構造をゲル電気泳動により評価した。 (a)0.07-0.35等量:得られる生成物は{Mo154}のみ。反応後に得られた沈殿について、電気泳動から単一成分と確認し、IRスペクトルやX線構造解析から{Mo154}と同定。 (b)0.35-1.7:還元剤量の増加により他のポリ酸(≠{Mo154}の生成を電気泳動により確認した。完全な帰属は本提案の課題だが、0.9等量以上で得られる化合物については、{S2Mo18}=[MoVI16MoV2054(SO3)2]6-(既知化合物)と単結晶X線構造解析や分取後のIRによる同定に成功した。{S2Mo18}は、{(SO3)2⊂Mo18}と表せる。{Mo154}は{Mo36}がテンプレートと示唆されている一方、還元剤の酸化分解で生じるSO32-がある程度増え、SO32-がテンプレート効果を示したと考えられ、巨大クラスターの形成機構解明につながる重要な知見を得た。
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