2010 Fiscal Year Annual Research Report
生体化学・力学的複合環境における金属系バイオマテリアルの生体適合性と表面改質
Project/Area Number |
22860036
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮部 さやか 大阪大学, 工学研究科, 助教 (50584132)
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Keywords | 生体材料 / 金属系バイオマテリアル / 腐食挙動 / 急速歪み電極法 / 模擬生体環境 / 塑性変形 / 弾性変形 / 不働態皮膜破壊 |
Research Abstract |
金属系バイオマテリアルが使用される実際の生体環境は、各種イオンを含んだ溶液にさらされる化学的環境と咀嚼や歩行といった動的荷重の負荷される力学的環境の複合的環境である。しかしながら金属系バイオマテリアルの腐食挙動に関する現在の研究は両環境の考慮が未だ不十分である。そこで本研究では、生体環境を模擬した溶液中で急速歪み電極試験を行うことで、化学的環境と力学的環境の複合的環境中、つまり実際の生体環境を模擬した環境における金属の腐食挙動への影響を解明することを目的としている。実験には、生体環境を模擬した溶液中で生体材料として用いられるTi、Ti-6Al-4V、SUS316Lを用い、急速歪み電極試験を行った。その結果、SUS316L,Ti試料では試験開始直後からの弾性変形領域では微小な電流が観察され、塑性変形領域に入った直後では電流値の急激な立ち上がりが認められ、その後傾きは減少し、引張停止時から電流値は急激に減衰する経時的な電流値の変化を測定することができた。このことは、塑性変形領域では弾性変形領域に比べより多く金属表面の不働態皮膜破壊が生じ新生面からのイオン溶出が生じ、その後皮膜破壊と再不働態化が同時に起こり、引張停止時からは再不働態化のみが進行していることが示唆された。変形にともなう不働態皮膜破壊時の電流の最大値はTiの他の2試料と比較し非常に大きな値を示した。皮膜破壊と再不働態化によって生じた総電気量はSUS316L>Ti>Ti-6Al-4Vの順となり、SUS316LはTi、Ti-6Al-4Vに比べ有意に高い値を示した。このことより、SUS316Lは再不働態化の所要時間が他の2種に比べ長いと言える。 今後の課題として、より実際の生体環境に近い環境として、試験片上に細胞培養を行い、生体金属に動的歪みを負荷した際の腐食挙動に与える細胞の影響の解明を行っていく予定である。
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