2010 Fiscal Year Annual Research Report
鉄バクテリア由来ナノサイズ非晶質酸化鉄の構造解析とLiイオン電池電極材料への応用
Project/Area Number |
22860040
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
橋本 英樹 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助教 (60579556)
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Keywords | 鉄バクテリア / バイオジナス酸化鉄 / 非晶質 / Liイオン電池 |
Research Abstract |
本研究の目は,鉄バクテリアが作るバイオジナス酸化鉄の原子レベルでの構造をあきらかにすると共に,これをLiイオン電池の電極材料(正極および負極)として応用することである.平成22年度は,放射光(SPring-8,PF)を利用したアモルファス構造解析を行い,Liイオン電池への応用は主に充放電挙動の検討を行った.以下に研究成果の概要を記載する. XAFS測定によりバイオジナス酸化鉄はFeO6八面体を有することが明らかとなった.これは一般的な鉄酸化物であるα-Fe203,Fe304,2-line ferrihydriteと同様であったが,長距離秩序が異なり,非晶質構造を有することを示した.この結果を更に発展させ,HEXRD測定及びRMC法を併用し非晶質構造解析を行った.一般的な鉄酸化物は規則的なイオン配列を有するが,バイオジナス酸化鉄はFeO6八面体とSiO4四面体が不規則に配列していることが分かった.具体的には,FeO6八面体が主に頂点及び稜を共有してネットワーク構造を形成し,その中にSiO4四面体がモノマーやダイマーとして孤立して存在することを示した.この結果は,非晶質酸化鉄の構造を原子レベルで解析した初めての例であり,これまで構造の不確かであった低結晶性あるいは非晶質酸化鉄系材料の構造解析に新たな指針を示すものと考えられる. バイオジナス酸化鉄を正極として用いてLiイオン電池を組み立て充放電特性を評価したところ,初期放電容量が620mAh/gと極めて高い値を示すことを見出した.電極作製の際の活物質,導電助剤,粘着材の比を最適化したところ,2:6:2の比で作製した電極が最も良いサイクル特性を示すことを見出した.この結果は,微生物が作る酸化鉄をLiイオン電池電極材料として適用した初めての例であり,この成果を基礎として低コスト,高性能Liイオン電池の開発が期待される.
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