2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22860045
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
家形 諭 九州大学, 稲盛フロンティア研究センター・エレクトロニクス材料研究部門, 特任助教 (00585929)
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Keywords | スピン流 / スピン吸収 / 磁気異方性 / スピン注入 |
Research Abstract |
本研究では電子ビーム蒸着装置を用いて金属薄膜を作製し,電子線描画装置を用いてPy/Cu/Py面内スピンバルブ構造を基本に,Cu下にスピン吸収体を付加した場合のスピンシグナルの検出を行った.スピン吸収体とはPy間を流れるスピン流を吸収する役割をもつ.そのため吸収体があることにより,一般的にスピンシグナルは減少し,その現象具合から吸収されたスピン量を概算することができる.このスピン吸収体の原理はスピン流の緩和速度の違いを利用したものであり,Cuに比べてスピン緩和が異なるものであれば,どのような材料でもスピン吸収体として利用することができる.今回の研究成果ではスピン吸収体としてPyやGdなどを用いた.スピン吸収体PyをCu下に配置した場合,スピンシグナルの減少が観測された.これはPyがスピン吸収体として働いたためであると考えられるが,吸収体の表面積とスピン吸収量の相関がとれないため,スピン吸収体が配置されたためことに起因したCuの形状変化がスピンシグナルの変化に寄与していることが考えられる.そこでPy間に配置されたCuにさらに垂直方向に分岐したCu電極を配置し,そこへスピン吸収体を配置した.その結果スピン吸収体の表面積の変化に伴ったスピンシグナルの変化が見られるようになった.これらの結果は味方を変えればスピン流が流れる方向に対してスピン吸収量に異方性があることを示している.すなわちスピン流の流れの方向に対して妨げるようにスピン吸収体を配置すればより効率的にスピン流が吸収されることが考えられる.今回得られた結果はスピン流を単に吸収させたというだけでなく,金属中におけるスピン流を制御するために,電圧などの外部シグナルを利用するのではなく,スピン吸収体を横に配置するだけで良いという点で,低消費電力化の観点からも非常に意義があると考えられる.
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