2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22860056
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
戸谷 吉博 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特任助教 (70582162)
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Keywords | 大腸菌 / 中心炭素代謝経路 / 動的シミュレーション / 代謝フラックス解析 / トランスクリプトーム / 硝酸代謝 / メタボローム / arcA遺伝子欠損株 |
Research Abstract |
細胞代謝は転写、翻訳、酵素反応のレベルで制御されており、これらの複数の階層に跨ってどのように代謝が調節されているのかは大変興味深い。大腸菌は好気、嫌気、硝酸条件において大きく異なった代謝の表現型を示し、その仕組みは複雑である。例えばTCA回路の遺伝子発現はグローバルレギュレーターのArcやFnrによって調節されているが、そのフラックスレベルでの調節はよく分かっていない。我々は外部環境の変化に応じた細胞の遺伝子発現-代謝ネットワークの調節機構の解明を目的に、マルチオミックスデータの比較解析、及び取得したオミックスデータを動的モデル上に統合することを目指した。 本年度は、大腸菌野生株を好気、嫌気、硝酸条件で、ΔarcA株を硝酸条件で連続培養し、トランスクリプトーム、メタボローム、代謝フラックスを測定し、それぞれの調節機構を考察した。特に硝酸条件下のΔarcA株ではTCA回路の遺伝子発現が増加し、硝酸を利用した呼吸鎖が働くことで、酸素がないにも関わらずTCA回路のフラックスが劇的に増加することを明らかにした。また反応毎の遺伝子発現量とフラックスを比較し、経路ごとに相関に違いがあることを示した。 また、Kadirら(2010)の動的モデルに嫌気発酵経路を加え、メタボロームとフラックスを利用したチューニングを行うことで、各条件とも定常状態においてこれらの実測値を説明するシミュレーションを実現した。ΔarcA株については、遺伝子発現比を入力してシミュレーションを行ったところ、予測された反応速度は実測したフラックスとほぼ一致することを確認した。このように動的モデルは異なる階層のオミックスデータを統合するプラットフォームと成りうることを示した。本研究では、他にも同位体標識を利用してモデルパラメータをハイスループットに取得するための方法を開発し、大腸菌中心炭素代謝経路の酵素について検討した。
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