Research Abstract |
発電効率や耐久性に優れた最適な電極配置や燃料濃度分布を有する燃料電池を実現するため,燃料電池内の電流密度分布の可視化が必要となっている.本研究では燃料電池を対象に,電磁場逆解析を用いた無侵襲モニタリング手法として,(1)燃料電池周辺に生じる磁場分布の効率的な計測手法,(2)計測した磁場データの中で逆解析に有益な情報を抽出する手法,(3)(1)および(2)を用い,燃料電池内の電流密度分布を推定する逆解析手法を開発した.本研究の具体的な研究内容と成果を以下に示す. 1.本手法の実用化に向けた検証実験に先駆け,本研究では実験に用いる燃料電池の境界要素法モデルを作成し,電磁場解析シミュレータを用いて,シミュレーション実験を実施した.欠陥部の有無や位置を変えた種々の条件下で,燃料電池周辺に生じる磁場を計算し,測定される磁束密度の大きさを見積もった. 2. 1.により得られたシミュレーション結果に,本手法を用いて燃料電池モデル内の電流密度分布を推定した.これにより,電流密度分布の推定結果が,始めに与えた正解の電流密度分布とよく合うことを確認した.また,本手法によって,検証実験における磁場計測点と,逆解析に用いる境界要素の抽出を行った. 3. 1.および2.の結果を踏まえ,実際の燃料電池を用いた検証実験を実施し,磁気センサを用いて燃料電池周辺の磁束密度分布を取得した.しかしながら,得られた磁場データはシミュレーション実験にて見積もった磁束密度の値とは一致しなかった.これは,電磁場解析シミュレータにて与えた境界条件等が検証実験に用いた燃料電池のものと異なったためと考えられる.今後は,電磁場シミュレータの燃料電池モデルと検証実験の仕様を見直し,これらの差異を検討する.検討後,検証実験を再度実施し,磁場データを取得して本手法の実用に向けた検証を行う予定である.
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