Research Abstract |
本年度においては,複合表面処理による硬質皮膜創製手法の提案とその形成メカニズムの解明,および硬質皮膜被覆処理が金属材料の超高サイクル疲労特性に及ぼす影響について検討を加えた. 1.硬質皮膜被覆処理による金属材料の高疲労強度化を目的として,表面改質プロセスを複合化させることによって高強度硬質皮膜の創製手法を開発した.具体的には,予め微粒子ピーニングによって金属材料の結晶粒を微細化させることにより,二段目の熱処理工程における元素拡散挙動を促進させ,金属表面に高硬度な元素拡散層を形成させることに成功した.また,一段目の微粒子ピーニングによる金属微視組織変化挙動と関連付けて,本プロセスによる表面改質効果の発現機構を明らかとした. 2.表面硬質皮膜被覆材料の超高サイクル疲労特性について実験的検討を加えた.具体的には,ヤング率,硬さ,膜厚の異なる種々の硬質皮膜を被覆したアルミニウム合金(PA405-T6,TF12B,A2014)に対して回転曲げ疲労試験を実施し,超高サイクル疲労特性について検討を加えた.その結果,アルマイト処理を施した場合,膜厚の増加に伴い疲労限度が低下する傾向が認められた.これは,膜厚の増加に伴って膜に内在する割れや孔が増加するためである.一方で,超高サイクル域では疲労強度の低下は認められなかったことから,寿命域によってアルマイト被覆材の疲労特性が変化することを明らかとした.次に,溶射皮膜の場合には,膜厚の増加に伴い疲労限度は上昇した.この要因が,皮膜が負荷応力を負担することに起因したき裂発生の抑制であることを明らかとした.また,疲労試験後にSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて破面観察を行い,破壊形態の変化と関連付けて疲労特性改善要因を明らかとし,統一的に硬質皮膜被覆材料の高疲労強度化に関する指針を示すとともに今後の課題を抽出した.
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