2011 Fiscal Year Annual Research Report
天明の大火を画期とした京都の寺社建築と寺町景観の変容
Project/Area Number |
22860068
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中村 琢巳 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, ポストドクトラルフェロー (20579932)
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Keywords | 京都の寺社建築 / 近世寺院建築 / 寺町景観 / 都市大火の歴史 / 天明の大火 / 寺院明細帳 |
Research Abstract |
本研究は近世寺院建築とそれらが群となってつくりだす寺町景観を対象とした日本建築史研究である。対象として日本を代表する歴史都市・京都を設定し、その寺町景観の成立画期を「天明の大火」(1788年)と捉え、大火前後での景観変容を分析する。 昨年度に実施したフィールド調査と文献調査による収集資料を整理・分析し、今年度は研究成果の学会口頭発表(日本建築学会大会,2011年8月)ならびに論文発表(日本建築学会関東支部,2012年3月)を行った。 「京都市街地における錣葺き仏堂の分布域について」と題した論文発表は、京都に現存する錣葺き仏堂の分布様態から「天明の大火」による景観変容を論じたものである。まず、悉皆的なフィールドワークにより錣葺き屋根をもつ近世寺院建築群を把握し、それらが「天明の大火」被災域の外側に集積することを指摘した。次いで、「天明の大火」被災域の内側、すなわち焼失建物の具体的な屋根形態を「都名所図会」(1780年)に収録された境内図から検討した。フィールド調査と絵画分析を組み合わせた独自の方法論によって、「天明の大火」以前に京都市街に点在していた錣葺き仏堂の衰退を論証した。 京都に現存する近世寺院建築は、現存数の多さと造営年代の新しさから、建築史研究の対象として取り上げられることは少ない。本研究はそれらを姐上にあげた学術的な歴史研究であるとともに、京都に大量に現存する未指定文化財の価値創成を試みた「文化遺産の価値評価研究」としても位置づけられよう。
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Research Products
(4 results)