Research Abstract |
粒径や形状のバラツキが精緻に抑制された単分散微粒子は,均一性の高い粒子特性をもつことから,これを粉体素材として用いることで材料品質のバラツキが抑制され,従来晶質を凌ぐ高品位材の市場供給が可能となる,しかし,単分散微粒子を反応晶析法で得る場合,2次的な核発生や凝集の抑止等,製法上の課題を克服する必要がある.これに対し筆者は,水溶性高分子電解質のポリエチレンイミン(PEI)を添加剤に用いて,ミクロンサイズの単分散微粒子を硫酸ストロンチウム系で再現良く得ることに成功した.具体的には,PEIを4.5g/L程度添加し酸性条件にて晶析操作することで,通常必要となる原料供給速度の変調操作を行うことなく,粒径4±1μm,CV12±5%の単分散微結晶を約3g/hrで簡易製造できる.市販品(従来法)は粒径や晶癖が不揃い(CV 37%)であるのに対し,改良品(本法)は均質(CV 12%未満)となった.さらに,熟成操作を組み込むことで粒径分布が単峰化し,粒径分布の単分散性が向上した.PEI無添加の場合,製品結晶個々の単分散性は概ね良好であったが,貫入晶や凝集晶が見られた.PEI添加の場合,無添加に対して粒径が90%程度微小化し,結晶間の貫入や凝集が抑止された,製品結晶の粒径および粒径分布幅は,いずれもPEI量に対して減少の傾向となり,PEI量により結晶品位を操作しうることが示された.単分散を得るポイントは,ポリエチレンイミンが核発生速度・結晶成長速度・凝集速度を同時抑制する点にあると考えられた.すなわち,核発生が起こる前にイミン基と遊離の金属イオン(原料成分)が錯体を形成することで核発生速度が抑えられ,多分散化の原因となる2次核発生を抑止でき.さらに,高分子鎖のゲル網による立体障害効果を用いることで,微結晶間の衝突頻度が小さくなり,結晶成長ならびに凝集が抑止されると考えられた.
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