2010 Fiscal Year Annual Research Report
特異的相互作用を利用した新規タンパク質集合体の構築と高効率酸化反応への展開
Project/Area Number |
22860080
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
毛利 剛 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 博士研究員 (50581922)
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Keywords | バイオテクノロジー |
Research Abstract |
本研究は、優れた生体酸化触媒として注目されているシトクロムP450の触媒反応におけるタンパク質問電子伝達効率を向上させ、より高度な新規バイオ酸化反応系を構築することを目的としている。具体的には、アビジン-ビオチン相互作用を用いて、3つ以上のタンパク質から構成されるP450反応系のタンパク質集合体を調製し、タンパク質集合体ならではの擬似的な分子内相互作用効果を利用した高効率な電子伝達系の構築を行うことを検討した。本年度は、P450camタンパク質へのビオチンの導入を行うために、遺伝子組換え実験を行った。その結果、ビオチンが結合するペプチドタグをP450camタンパク質へ導入することに成功した。本研究は、P450の機能を十分活用するために、人工的に集合体を形成させる新しいバイオ酸化系の構築を目指すものである。既存のタンパク質集合体を構築する研究は、遺伝子工学的手法や化学修飾により盛んに行われてきた。しかし、遺伝子工学的手法では、融合タンパク質として一本のポリペプチド鎖で発現せざるを得ず、構築方法の選択肢は少ない。また、一般に多数のタンパク質を融合タンパク質として発現させることは容易ではない。化学修飾法では部位特異的に結合させることは困難である。それらと比較して、本研究における最大の特色は、相互作用分子と足場分子の特異的な結合を利用することにより、遺伝子工学的手法よりも容易で、化学修飾法では困難な部位特異的なタンパク質結合形成が期待できる点にある。この新規システムの確立は、土壌中の芳香族系の環境汚染物質分解や医農薬系化合物の生産プロセスに繋がる可能性があり、社会的意義は大きい。さらに、本実験系の構築だけでなく、複数のタンパク質を必要とする他の酵素系を構築する際の有用な指針になると考えられる。
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