2011 Fiscal Year Annual Research Report
後生動物発生様式の網羅的解析による幼生型の多様性と進化の解明
Project/Area Number |
22870003
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中野 裕昭 筑波大学, 生命環境系, 助教 (70586403)
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Keywords | 後生動物 / 新口動物 / 発生 / 幼生 / 多様性 / 進化 / 平板動物 / 珍渦虫 |
Research Abstract |
所属機関である筑波大学下田臨海実験センターでは採集動物のデータベース化およびその公開が計画されており、得られた発生や繁殖に関する情報もそのデータベース上で公開する予定である。後生動物の発生様式の網羅的解析を行う中で、当初から着目する予定であった平板動物と珍渦虫の研究では以下の成果が得られた。 平板動物は神経細胞や筋肉細胞もない単純な体制をもち、現生の中で最も祖先的な形質を残す動物の一つとされる。しかし、未だにその発生の報告はなく、実験室飼育系統以外の研究が進んでいない動物である。昨年度は野生の平板動物は秋の限られた時期のみ大量採集が可能であり、冬場には一切採集できなかったが、今年度は採集方法を改良することにより冬も含め、秋以外も大量採集が実施できた。その結果、一年を通した採集が可能になり、採集した個体の研究室での飼育も前年度より安定して行えた。これらのことから、発現遺伝子の季節的変動の追跡等の実験的手法が可能になり、今後の平板動物研究の基礎となるような成果が得られた。さらに、下田で採集された個体の分子系統学的解析を行ったところ、これまで日本で報告されていないグループに属することが明らかになった。また、採集個体からの卵割胚、卵の観察・固定にも成功しており、解析が進行中である。 珍渦虫は、長くその系統学的位置が不明であったが、昨年度に珍渦虫と無腸類が新口動物内の第4の門を形成すると報告した。現在は海外の共同研究者とともに珍渦虫ゲノムプロジェクトが進行中であり、この説の検証を行っている。また、珍渦虫固定胚を透過型電子顕微鏡で観察し、他の動物の発生様式と比較することで、珍無腸門や後生動物・新口動物の幼生型の進化についての新たな知見が得られている。この結果は国際学会で発表済みで、現在投稿準備中である。
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