2010 Fiscal Year Annual Research Report
個体発生および脳機能における平面内細胞極性因子の役割の解明
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22870019
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
橋本 昌和 基礎生物学研究所, 形態形成研究部門, 特別協力研究員 (60580496)
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Keywords | 平面内細胞極性 / 原腸陥入 |
Research Abstract |
マウスの原腸陥入は他のモデル動物同様、ダイナミックな細胞の移動によって引き起こされるが、その形態変化は特殊であり、メカニズムには不明な点も多い。エピブラストから遊離し遊走する間葉系の細胞群がどのようにして協調して移動し、原条やノードなどを形成する事ができるのだろうか?平面内細胞極性因子として知られるPrickle1やCelsr1はこの時期において原条で発現している。これは平面内細胞極性経路が原条で活性化し、胚遠位および前方側への細胞の集団移動をオーガナイズしている可能性を示唆している。 本研究では、同じく平面内細胞極性因子であるDishevelled2,3のダブルノックアウトマウスは原条に細胞が蓄積し、肥大するという異常を見いだした。Dishevelled(Dvl)はWnt/beta-catenin経路にも重要な因子であるので、どちらの経路が必要であるのかを検証するためDsh1,△DIX,△DEPの3種類のtruncated transgeneを用いたレスキュー実験を行った。 原条形成の異常はDvl2の完全長トランスジーンではレスキューされたのに対して、Dvl蛋白質の膜移行に必要だとされるDEPドメインを欠くDvl2-△DEPや、平面内細胞極性経路に必須なアミノ酸に変異を入れたDvl2-Dsh1では全くレスキューされなかった。しかし、Dvl2-△DIXでは原条における細胞の蓄積が回避されていた。△DIXはWnt/beta-catenin経路の活性を失うが、平面内細胞極性経路の活性は保持されることから、原条の細胞移動には平面内細胞極性経路が必要であることを強く示唆している。 これまでカエルやマウスなどにおいて脊索の収斂伸長に平面内細胞極性が関与することはいくつも報告されてきたが、より早いステージである原腸陥入や中胚葉のパターニングにおいても重要である事を本研究によって明らかにすることができた。
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