2011 Fiscal Year Annual Research Report
下顎骨と歯牙の形態学的関連性とその機能的・進化的意義
Project/Area Number |
22870025
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
深瀬 均 北海道大学, 大学院・医学研究科, 特任講師 (00582115)
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Keywords | 骨格形態 / 個体発生 |
Research Abstract |
本年度の主な目的は、ヒト、チンパンジー、ニホンザル、そしてマントヒヒの下顎結合部の断面形状の機能的意義を調べることであった。未萌出歯牙の空間的配置パターンの種間比較を行った結果、ニホンザルとマントヒヒでは犬歯の歯胚間幅が極めて狭く、それゆえ側切歯が中切歯の後方、犬歯の上側に配置されていることが明らかになった。対照的に、ヒトでは犬歯間スペースが広く、かつ前歯も小さいことから、側切歯がちょうど中切歯と犬歯の間の空間に収まるような位置で成長することが観察された。チンパンジーに関しては、犬歯間幅は広いものの、切歯サイズが大きいため、中切歯と側切歯は前後に重なるようにして成長していた。このように、前歯の歯胚の配置パターンには種間差があることが示された。また、ヒト以外の霊長類において、側切歯の歯胚の位置と形状が、下顎結合部舌側にみられるsuperior transverse torusのそれに一致していることが明らかになった。このように、下顎結合部の断面形状には、従来考えられてきた生体力学的要求以外にも、歯牙の形成のための空間的必要性が関与していると考えられる。しかしながら、下顎結合断面の傾き角度の種間差は個体発生の過程で一貫して観察されたことから、これを歯牙と下顎骨との局所的な関係で解釈することは困難である。これらの結果から、種特異的な下顎結合部の断面形状の一部は形成中の前歯の配置パターンに起因することが示唆された。また、これらの結果は、下顎骨形態の解釈において、内部で起こる歯牙形成過程を把握することの重要性、および下顎骨の空間的機能性の重要性を再認識させるものであった。
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Research Products
(5 results)