2011 Fiscal Year Annual Research Report
乳腺上皮細胞における電解質透過性およびその調節機構の解明
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22880003
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
上川 昭博 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (30581665)
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Keywords | 乳腺 / イオンチャネル / 上皮細胞 / 電気生理学 / 発達 |
Research Abstract |
乳汁分泌機構を明らかにすることは、家畜の乳量や乳質の向上のために重要である。乳腺腺房細胞でのイオンチャネルを介した選択的な電解質輸送が乳汁分泌の駆動力を与えると考えられているが、乳腺腺房細胞で機能的に発現しているイオンチャネルは何一つ明らかではない。そこで、乳腺腺房細胞がもつ電解質透過性とそれに寄与するイオンチャネルなどの透過性分子、さらにその発現、活性調節機構を明らかにすることを目的に研究を行った。まず、泌乳期のマウスから乳腺腺房細胞を単離し、電気生理学的解析法のひとつであるホールセルパッチクランプ法を用いて細胞膜の電解質透過性を探索した。その結果、内向き整流性のK+電流(Kir電流)を発見した。このKir電流は細胞外のBa^<2+>(10^<-4>M)およびCs^+(10^<-3>M)により強く抑制された。また、細胞内、細胞外のpH変化はKir電流に影響を与えなかった。次に、強い(または中程度の)内向き整流性をもつことが知られているKir2.xチャネル(Kir2.1-2.4)とKir4.xチャネル(Kir4.1,4.2)の乳腺におけるmRNA発現をRT-PCR法を用いて解析した。妊娠前のマウス乳腺ではいずれのKirチャネルのmRNA発現も検出限界以下であったが、泌乳期のマウス乳腺ではKir2.1とKir4.2のみが強く発現していた。免疫組織化学染色法を用いて泌乳期のマウス乳腺組織におけるKir2.1、Kir4.2の局在を解析したところ、Kir2.1は乳腺腺房細胞において強い陽性を示した。一方Kir4.2は乳腺腺房細胞にかすかな陽性染色像を示すのみであった。 以上の電気生理学的性質、薬物感受性、遺伝子およびタンパク質発現の解析から、乳腺腺房細胞にはKir2.1チャネルが機能的に発現していることが強く示唆された。このチャネルは様々な細胞において静止膜電位形成に関与していることが知られており、乳腺分泌における役割についても大変興味深く、さらなる解析が待たれる。
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