2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22880014
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 智和 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (90584970)
|
Keywords | D-セリン / D-セリンデヒドラターゼ |
Research Abstract |
D-セリンは哺乳動物脳内でNMDAレセプターのコアゴニストとして作用する他、さまざまな神経疾患や発生との関連などが示唆されているが、その生理機能の全貌はまだ明らかではない。本研究ではD-セリンの代謝関連酵素の解析を通じて、真核生物におけるD-セリンの生理的役割の解明を目指している。 本年度は、D-セリンに高い特異性を示す出芽酵母由来D-セリンデヒドラターゼの結晶構造解析を試みた。タンパク質結晶の析出条件等を検討し、2.4オングストロームの分解能のデータを得た。また、同酵素が有するユニークな亜鉛の依存性について検討した。その結果、亜鉛がD-セリンからのCαプロトンの引き抜きと、ヒドロキシル基の脱離の双方に必須であることが示された。同酵素を用いたD-セリンの高感度定量法の開発を行った結果、サブマイクロモルオーダーのD-セリンの定量が可能となった。本定量法をウシ血清やマウス脳抽出液、各種食品サンプル中のD-セリンの定量に適用し、これら試料に、本定量法が利用可能であることを示した。今後は、臨床応用を目指したより簡便な前処理法の確立を目指す必要がある。哺乳動物と同様のD-セリン代謝関連酵素を有する細胞性粘菌をモデルとし、その遺伝子破壊などを通して真核生物におけるD-セリンの生理的役割を検討した。細胞性粘菌におけるD-セリン合成酵素(セリンラセマーゼ)および分解酵素(D-セリンデヒドラターゼ)破壊株作製用プラスミドベクターを構築し、D-セリンデヒドラターゼ破壊株を所得した。
|