2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22880014
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 智和 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (90584970)
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Keywords | D-セリン / D-セリンデヒドラターゼ / ピリドキサール |
Research Abstract |
Diセリンは哺乳動物脳内でNMDAレセプターのコアゴニストとして作用する他、さまざまな神経疾患や発生との関連などが示唆されているが、その生理機能の全貌はまだ明らかではない。本研究ではD-セリンの代謝関連酵素の解析を通じて、真核生物におけるD-セリンの生理的役割の解明を目指している。 本年度は、ヒト尿中に高濃度排出されるD-セリンの臨床的な意義の解明の第一段階として、D-セリンに極めて高い特異性を有する出芽酵母由来D-セリンデヒドラターゼ(Dsdlp)を利用したD-セリン酵素定量法(既に開発済み)のハイスループット化を目指した。96ウェルプレートを用いた酵素定量法の最適化を行い、ヒト尿中D-セリンの迅速定量が可能となった。 また、Dsdlpはその活性にピリドキサールリン酸に加えて亜鉛を要求するユニークな酵素であり、その亜鉛の要求性を生化学的に検証した。その結果、亜鉛が酵素C末端のシステイン、ヒスチジン残基によって保持され、D-セリンからのヒドロキシル基の脱離に必須であること、また、このヒドロキシル基の脱離は、αプロトンの引き抜きと共役することを示した。 さらに、細胞性粘菌D.discoideum由来Dsdlpのノックアウト株の構築と、そのフェノタイプの検証を遂行した。D.discoideum、Dsdlp欠損株は多細胞期でD-セリンの蓄積が観察され、発達遅延が観察された。またDsdlp欠損株では、胞子形成率が野生株と比較して1%以下に低下することが明らかとなった。
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