2010 Fiscal Year Annual Research Report
樹木年輪セルロースの酸素同位体比によるインドシナ半島の古気候復元
Project/Area Number |
22880015
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐野 雅規 名古屋大学, 環境学研究科, 研究員 (60584901)
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Keywords | 年輪年代学 / 気候復元 / 酸素同位体比 / モンスーン / フォッキニア / ベトナム / ラオス |
Research Abstract |
ベトナムとラオスの国境を成すアンナン山脈を対象とし、現地での聞き取り調査からフォッキニア(ラオスヒノキ)の大径木の分布域を把握したうえで、実際にそれらの地域にて老齢木を探索した結果、3地域の天然林から合計92個体306コアの年輪サンプルを採取することができた。持ち帰ったサンプルの観察から、年輪幅変動の個体間での共通性が乏しく、それゆえ、変動パターンの個体間比較による年輪年代の照合が困難であった。これは、隣接木との競合による生態的な要因が肥大成長を大きく左右するためで、既往の研究から予測しうる結果であった。 本研究では、生態的な影響を受けず、主に気候を反映している酸素同位体比の変動パターンを多数の個体間で比較することにより年輪年代を決定し、その結果として得られる標準年輪曲線による気候復元を目的としている。そのためには、大量のサンプルからセルロースを迅速に抽出する実験手法の考案が不可欠であり、本年度はその方法を確立した。具体的には、これまで年層を一枚ずつ分離したうえで粉砕し、年層毎に反応管にて化学処理を施しセルロースを抽出していたが、年層の分離前にサンプルを薄板化し、年輪の形状を保ったまま化学処理を行い、板状のままセルロースを抽出した後に年層を切り分ける方法に改め、作業効率を飛躍的に向上させることができた。また、同一サンプルを用いて、酸素同位体比につき従来の方法と比較したところ、絶対値に差があるものの、経年変動パターンは極めてよく合っており、新しい実験方法が、本研究の目的とする気候復元に十分耐えうることが確認できた。
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