2010 Fiscal Year Annual Research Report
情動・代謝機能を制御する光周性機構の解明と栄養学的考察
Project/Area Number |
22880026
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安尾 しのぶ 九州大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (30574719)
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Keywords | 光周性 / 季節 / ストレス / 情動 / コルチコステロン / 副腎 |
Research Abstract |
温帯地域に生息する生物は季節を日の長さから読み取り、ストレス、情動、代謝などを変化させる。この性質は「光周性」と呼ばれ、人間では冬にうつ症状が発症する季節性感情障害に関わる。本研究ではまず、ストレスや情動機能に明確な光周性反応を示す動物モデルを確立するため、季節繁殖性をもつFischer 344ラットにおいて、ストレス反応を制御する視床下部-下垂体-副腎軸に対して日長が及ぼす影響を検討した。副腎由来のストレスホルモンであるコルチコステロンの日内変動を調べたところ、短日条件では強い日内リズムを示したが、長日条件ではこのリズムが消失した。一方、コルチコステロンの分泌を制御する副腎皮質刺激ホルモンは、どちらの日長条件でも日内リズムを示さなかった。さらに、短日条件において、副腎皮質刺激ホルモンに対するコルチコステロンの分泌反応性が増加していたことから、副腎における感受性の変化がコルチコステロンの日内リズムを調節することが示唆された。また、日長がFischer 344ラットの不安様行動に及ぼす影響をオープンフィールド試験および高架式十字路試験にて検討したところ、短日条件において不安様行動が増加する傾向が見られたが、個体間でばらつきがあった。さらに情動・代謝を制御する生理活性脂質エンドカンナビノイド含量が視床下部において変化するとともに、エンドカンナビノイドを調節する摂食抑制ホルモンであるレプチン含量も血中で変動していた。以上の結果から、コルチコステロンの日内リズムの変化および脳内エンドカンナビノイド含量がストレス・情動・代謝の光周性に関与していることが示唆された。これらの成果により、季節性感情障害の新たな動物モデルを提唱できたとともに、その発症メカニズムを解明する上で重要な知見が得られた。
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