2010 Fiscal Year Annual Research Report
ミエリン疾患および肝線維化モデルラットにおける鉄代謝の病理学的役割の解明
Project/Area Number |
22880029
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
井澤 武史 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (20580369)
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Keywords | 鉄代謝 / 鉄調節因子 / 難治疾患 / ミエリン疾患 / 肝線維化 |
Research Abstract |
難治疾患であるミエリン疾患の進展に関わる鉄代謝の病理学的役割を追究する目的で,2種の異なるミエリン疾患モデル動物(dmyラット,mvラット)を用いて,ミエリン疾患の形成期から進展期における鉄代謝変化を経時的に解析し,得られたデータを2種のモデル動物間で比較検討した.ミエリン病変部の鉄組織化学染色を実施したところ,脱髄モデルであるdmyラットにおいて,病変の進展と一致してグリア細胞に鉄の過剰蓄積が認められた.ミエリン低形成モデルであるmvラットでは,病変部に鉄蓄積はみられなかった.鉄代謝の維持に関わる各種鉄調節因子の発現動態をリアルタイムPCR法により解析したところ,dmyラットでは病変の進展と一致して,鉄貯蔵蛋白ferritinと抗酸化酵素hemeoxygenase-1の発現上昇が認められた.mvラットではこれらの因子の発現変化は認められなかった.dmvラットの脱髄病変部における鉄調節因子の発現細胞を同定するため,蛍光二重免疫染色を行ったところ,ferritinの発現はアストロサイトとオリゴデンドロサイトに認められ,鉄蓄積の分布と一致していた.また,病変部のオリゴデンドサイトにおいてheme oxygenase-1の発現上昇が認められた.以上より,dmyラットの脱髄の病理発生には鉄の過剰蓄積による酸化ストレスが関与することが示唆された.一方,mvラットのミエリン低形成の病理発生には鉄代謝変化の関与が低いことが示された,上記の実験に加えて,難治疾患である肝線維化の進展に関わる鉄代謝の病理学的役割を解明する目的で,肝毒性物質であるthioacetamide誘発肝線維化モデルラットの作製実験を進めている.
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