2011 Fiscal Year Annual Research Report
ミエリン疾患および肝線維化モデルラットにおける鉄代謝の病理学的役割の解明
Project/Area Number |
22880029
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
井澤 武史 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (20580369)
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Keywords | 鉄代謝 / 鉄調節因子 / 難治疾患 / 肝線維化 / ミエリン疾患 |
Research Abstract |
難治疾患である肝線維化の進展に関わる鉄代謝の病理学的役割を追究する目的で,thioacetamide誘発急性肝障害モデルおよび肝線維化モデルラットを作製し,肝病変の進展に伴う鉄代謝変化を経時的に調べた.急性肝障害モデルでは,thioacetamide単回腹腔内投与による一過性の肝細胞傷害に一致して血清鉄の上昇が認められ,続いて肝細胞の鉄含有量が漸増し,肝病変の回復とともに正常レベルに回復した.全身鉄代謝の調節因子であるhepciainの発現は,血清鉄上昇の後に一過性に上昇した.肝細胞内の鉄蓄積と一致して,鉄の細胞内取り込みに関わるtransferrin receptorや鉄貯蔵蛋白ferritinの発現上昇が認められた.その後の鉄蓄積からの回復と関連して,鉄の細胞外排出因子ferroprtinの発現上昇がみられた.よって,急性肝障害により一過性の鉄過剰症が惹起されるが,hepcidinの発現上昇を中心として,鉄の肝細胞内取り込み・貯蔵の亢進およびその後の細胞外排出亢進により,鉄代謝が正常に回復することが示された.肝線維化モデルでは,thioacetamide反復腹腔内投与により進行性の肝線維化病変が形成され,病変の進展に一致して肝細胞内の鉄蓄積が進行した.さらにこの鉄蓄積の進行に伴って,hepcidinなどの鉄調節因子の異常な発現パターンが認められた.以上より,肝線維化の進展に鉄代謝障害(鉄過剰症)が関わり,この鉄代謝障害は鉄調節因子の機能異常に起因する可能性が示された.
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