Research Abstract |
<水田カマバチの地理的遺伝構造とその成因> 前年度までの調査で得られた試料の解析結果に基づき,同属のクロハラカマバチ(Haplogonatopus oratorius)とトビイロカマバチ(H. apicalis)の東アジアにおける地理的遺伝構造とその成立要因について考察した.寄主のヒメトビウンカの飛来先における越冬性や寄生対象種の多様性がクロハラカマバチの地理的個体群の遺伝的分化に影響していることを,越冬性のないセジロウンカのスペシャリストであるトビイロカマバチとの対比から明らかにした(Mita, et al, 2012). <カマバチの地理的遺伝構造からみたヒメトビウンカの移動経路> 上述の研究から,クロハラカマバチの遺伝構造は地理的に分化していることが明らかになった.一方で,寄主のヒメトビウンカも長距離移動性を持つので,共通のハプロタイプがみられる地域は地史的イベントを反映するだけでなく,現在の寄主の移動経路でもあると考えられる.近年のヒメトビウンカの移動経路に関する研究からは,中国の江蘇省付近が飛来源として推定されている.クロハラカマバチの遺伝構造はそれらの地域間で類似しており,佐渡島の個体群までは本州太平洋岸で見られない中国と共通のハプロタイプが認められた.これは,膨大な量が移動するウンカに替わって,寄生率の低さのため移動個体数が少ないカマバチでは検出できる可能性を示唆するものである.韓国で得た多数のサンプルも加えたハプロタイプのネットワークを構築することで,より詳細な解析を試みている(Mita, et al., in prep.). <東アジア地域におけるカマバチ科の分類> 調査の過程で,日本と台湾から2新種のカマバチを発見し,命名,記載した(Mita, 2012).また,未発見であったGonatopus javanusのオスをmDNAの部分配列,既知メスとの同所性から特定し,記載した(Mita & Matsumoto, 2012).
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