Research Abstract |
イソマルトオリゴ糖はグルコースがα-1,6グルコシド結合により結合した多糖で,デンプンを加水分解する一般的なα-アミラーゼでは加水分解されない特徴を持つ.近年,重合度が高いイソマルトオリゴ糖の合成に成功し,その機能性について研究が進められれてる.この新規の多糖の合成にはいくつかの酵素が用いられているが,それぞれの酵素がどのように糖を認識し,向きを制御し,合成反応を触媒しているのかに関しては不明な点が多い.本研究では,イソマルトオリゴ糖を合成もしくは分解する酵素のそれぞれの構造の違いから,酵素の基質認識機構を明らかにすることを目的としている.イソマルトオリゴ糖を分解するDexBは,立体構造解析から活性ポケットに水分子の通り道が予測されている.この通り道周辺に存在するアミノ酸残基に部位特異的変異を導入し,活性に与える影響を明らかにした.変異の導入は,酵素の構造には影響しないにもかかわらず,加水分解速度が大幅に低下した.結合している水分子の位置に変化が見られたことから,水分子がこの道を通りポケットに出入りする可能性が支持された.同様の水の通り道は,ポケットをもつ酵素に広くみられることから,多くの酵素に共通のメカニズムであると考えられる.イソマルトオリゴ糖を合成するI6GTについては,GH13保存領域IIおよびIIIに存在しているアミノ酸残基のうち,保存性が低く,かつサブサイト+1に存在する3つのアミノ酸残基に着目し,変異を導入した.その結果,変異酵素は転移反応よりも加水分解反応を触媒し,またα-1,6グルコシド結合への特異性も失われた.このことから,これらのアミノ酸残基が基質特異性を決める構造要因の一つであることが示唆きれた.
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