2011 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病網膜症の血管新生におけるalphaB-crystallinの役割
Project/Area Number |
22890006
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
加瀬 諭 北海道大学, 大学病院, 医員 (60374394)
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Keywords | alpha-crystallin / 血管新生 / VEGF |
Research Abstract |
眼内血管新生疾患では、近年抗VEGF抗体治療が注目されてきたが、臨床的には反復投与が必要であり、そのための合併症の発現が問題視されている。α-クリスタリンは熱ショック蛋白(HSP)におけるαA、αBという二つの異なるファミリーより成る。α-クリスタリンは水晶体構成蛋白として発見され、網膜や網膜色素上皮(RPE)にも発現されていることが確認された。加えて、α-クリスタリンは、熱刺激のみならず虚血、低酸素や炎症など、種々のストレスでその発現が誘導され、分子シャペロンとして細胞の増殖制御やアポトーシス、細胞の分化に関与している。本研究では糖尿病網膜症の発生がみられない段階における糖尿病眼の網膜においては、αA-クリスタリン、及び最終糖化産物(AGE)が高発現していることを示した。 この結果を踏まえ、リコンビナントAGE蛋白をマウスの硝子体に注入し、網膜を摘出してαムクリスタリンの発現を調べたところ、αA-クリスタリンの発現が誘導された。以上より、糖尿病眼において、αA-クリスタリンの発現が網膜のアポトーシス制御に重要な役割を果たすことが示唆された。α-クリスタリンの発現をヒト糖尿病網膜症の増殖組織を用いて解析したところ、網膜新生血管の血管内皮細胞にαB-クリスタリンの発現がみられ、かつVEGFと共発現していることを二重染色法で確認した。脈絡膜新生血管(CNV)の形成において、RPE細胞におけるVEGFの発現、分泌が重要であることが知られている。実際、αB-クリスタリンは、レーザー誘導CNVにおける脈絡膜ムRPE複合体において、照射後7日でその発現が誘導されることを確認した。 新生血管に対するαムクリスタリンの研究は、直接的なVEGF蛋白質を標的とするのではなく、その蛋白分解を制御している分子を治療標的にすることにより、抗VEGF抗体治療の効果の増強、反復投与の軽減効果が期待される。
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