2011 Fiscal Year Annual Research Report
終末期がん患者への緩和ケア提供に係わる医療費のケースミックス分類の開発
Project/Area Number |
22890018
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 一樹 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (60583789)
|
Keywords | 医療経済学 / 社会医学 / 緩和ケア / 終末期医療 |
Research Abstract |
包括支払いの診療報酬(緩和ケア病棟入院料)であるためその医療費の実情が明らかでなかった緩和ケア病棟での死亡前医療費を出来高で算出し、その関連要因を検討することにより、緩和ケア病棟での死亡前医療費の実態を明らかにし、今後の終末期医療の診療報酬のあり方を検討する。 緩和ケア病棟8施設で2006年5-10月に死亡したがん患者367名について、約5万件の会計カード(処置伝票)を入手し死亡前30日間の医療費を2006年の診療報酬を用いて出来高で算出した。対象者背景は、男性63%、平均年齢69±12歳、がん原発部位は肺22%、上部消化管21%、下部消化管18%の順で、緩和ケア病棟の平均在棟日数は40±51日であった。 入院料を除いた医療費では薬剤費が最も高く、死亡前30日間で、投薬料(薬剤費のみ)約6千点/人、注射料(薬剤費のみ)約90千点/人、計96千点/人であった。内訳は、強オピオイド鎮痛薬の投薬料の約8割、注射料の約2割で最も多かった。薬剤費の日ごとの変化では、死亡30日前には約100点/日であったのが、死亡前2週間以内は約800点/日で経過していた。また、死亡前医療費と患者の性別と有意な関連はみられなかったが、がん原発部位や年齢などとの有意な関連がみられた。さらに、投薬料や注射料のほかに、検査や画像診断などの診療報酬について同様の検討を加えた。 緩和ケア病棟の医療費はその方法論的難しさからこれまであまり検討されてこなかったが、本研究で初めて多施設調査により妥当な結果が得られた。身体的・心理的な症状を適切に緩和しQOLをできるだけ高く維持する質の高い臨死期ケアに必要な医療費の参考となる貴重な基礎資料が得られた。質の高い臨死期のケア提供のための医療費のばらつきを詳細に検討し、緩和ケア病棟のみならず今後の多死社会を迎えるわが国の終末期医療の診療報酬のあり方のさらなる検討が課題である。
|
Research Products
(3 results)