2010 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルスを用いた自閉症小脳病態の分子メカニズムの解明
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22890035
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本田 知之 東京大学, 医科学研究所, 助教 (80402676)
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Keywords | ウイルス感染 / 精神疾患 / 小脳障害 |
Research Abstract |
自閉症やうつ病、統合失調症などの精神疾患は、比較的発症頻度が高く社会的損失が大きい。しかし、それらの精神疾患の病態に関してはまだ不明な点が多い。精神疾患の発症には、遺伝要因と環境要因が関与すると考えられている。現在、多くの精神疾患研究のアプローチはゲノム網羅的解析などの遺伝学的解析によるもので、ウイルス感染などの環境要因を用いたアプローチは不足しており、遺伝要因と環境要因がどのようにクロストークして精神疾患のような高次脳機能障害を引き起こすかは明らかにはなっていない。一方、解剖学的な観点からは様々な脳部位が精神疾患の病態に関与することが明らかとなっている。小脳はその中でも比較的精神疾患への関与が多く報告されている脳部位であり、小脳障害のメカニズムを解明することは重要である。ボルナ病ウイルス(BDV)は、その感染動物が自閉症モヂル動物として研究されているRNAウイルスである。グリア細胞特異的にボルナ病ウイルスP遺伝子(BDV P)を発現するトランスジェニックマウス(P-Tg)は、様々な自閉症様の行動異常と小脳障害を呈する。本研究では、P-Tgを用いて行動異常を引き起こす小脳障害の分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。本年度の研究において、P-Tgの小脳障害の分子メカニズムについて以下の結果を得た。 1)マイク回アレイより同定したP遺伝子発現により変化する遺伝子群のうちInsulin-like growth factor binding protein 3 (GFBP3)について、その発現がP-Tg小脳で実際に変化していることを確認した。 2)IGFBP3が遅発性の小脳プルキンエ細胞脆弱性に関与し、IGFシグナルのかく乱がその脆弱性の本態であることを明らかにした。 3)PがIGFBP3の発現を制御するメカニズムは、Pによる宿主のリン酸化シグナルのかく乱ではないことを明らかにした。
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Research Products
(2 results)