2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22890036
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 大地 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30585500)
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Keywords | 卵巣 / 明細胞腺癌 / 遺伝子異変 / マイクロRNA |
Research Abstract |
本研究では卵巣明細胞腺癌とその前駆病変である卵巣子宮内膜症、明細胞腺線維腫との関係について研究を進めた。研究計画の段階では卵巣明細胞腺癌に特異的な遺伝子異常としてPIK3CA遺伝子の変異に着目していたが、2010年に明細胞腺癌の約半数にchromatin remodeling geneであるARIDIAの変異があることが報告されたため、明細胞腺癌におけるARIDIA異常についても検討を行った。我々は抗ARIDIA抗体を用いて免疫染色を行い、ARIDIA遺伝子変異との相関を見ることで、ARIDIA変異を有する明細胞腺癌ではARIDIA蛋白の発現が全例において失われること、ARIDIA変異のない明細胞腺癌の多くにおいてARIDIA蛋白発現が維持されることを示した。この結果から、ARIDIAに対する免疫染色がARIDIA変異をスクリーニングするのに有用な方法であると判断し、その後の検討を進めた。具体的には約150例の卵巣明細胞腺癌に対してARIDIAの免疫染色を施行し、ARIDIA発現と病理組織学的因子、臨床的因子との相関を見た。変異の存在を示唆するARIDIAの発現消失は59%の症例に見られた。内膜症を背景とする嚢胞状の明細胞腺癌と腺線維腫成分を含む明細胞腺癌の比較においてARIDIA発現に有意差はなかった。また、明細胞腺癌の背景に存在する異型内膜症や明細胞腺線維腫成分にARIDIAの発現消失が見出されたことから、ARIDIA遺伝子変異が明細胞腺癌発癌の早期に生じている可能性が示唆された。なお、ARm1A発現の消失と明細胞腺癌の予後との間に相関は見いだせず、ARIDIA遺伝子変異はtumorprogressionというよりもtumorinitiationに関与していると考えられた。これらの検討と並行して、明細胞腺癌とその前駆病変におけるPIK3CA異常についても解析を加え、最終的にはPIK3CA遺伝子異常の有無、ARIDIA遺伝子異常の有無の両面から取り組む方針とした。さらに明細胞腺癌とその前駆病変におけるマイクロRNA異常について基礎的なデータの蓄積をはかり、遺伝子異常、マイクロRNA異常の両面から明細胞腺癌発癌に取り組む土台を築いた。
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