2010 Fiscal Year Annual Research Report
サル免疫不全ウイルス感染細胞に対する抗体依存性細胞性ウイルス複製抑制機構の解析
Project/Area Number |
22890040
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 浩之 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (80574615)
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Keywords | ウイルス / 感染症 / 動物 / ゲノム / 遺伝子 |
Research Abstract |
個体レベルでのエイズウイルス(ヒト免疫不全ウイルス、HIV;サル免疫不全ウイルス、SIV)制御に極めて重要な役割を果たしうることを申請者が近年証明したウイルス特異抗体の感染細胞レベルにおける防御効果の解析を目的に、サル末梢血単核球(PBMC)をエフェクター細胞、サルCD4陽性T細胞株を標的細胞とする抗体依存性細胞性ウイルス複製抑制(ADCVI)アッセイ系の確立を行い、抗体のウイルス中和能の影響の評価を行った。手法として、試験管内においてカニクイサル不死化CD4陽性T細胞であるHSC-F株に高病原性SIVmac239株をMOI0.005で6時間感染させ、E:T比1:4にてウイルス非感染サル由来のPBMCと各種のSIV感染サルそれぞれ単独に由来する抗SIVポリクローナル抗体の存在下で共培養を7日間行い、上清中ウイルス量をGag蛋白のELISA法にて測定しADCVI活性の定量を行った。その結果、生理的範疇の濃度(0.1~1mg/ml)の中和抗体による高いADCVI能を確認し、同程度の濃度の非・中和SIV特異抗体においては高いADCVI能を認める群と認めない群の二つに分かれた。非中和抗体の2群に関しては、別途得られた不活化SIV全粒子を抗原とするELISA法で評価したウイルス粒子結合性と照応した結果、粒子結合性の低いサル由来特異抗体ほど胡CVI能も低い傾向が認められた。一方粒子結合性及びADCVI能が高いSIV特異的非・中和抗体を誘導するサル個体は、(1)感染初期に一定以上の体内ウイルス量を示し、(2)一定期間後に複製制御(血中ウイルスRNAコピー数が検出限界以下に至った状態)を示した個体ないし高度に血中ウイルス量が抑制された個体に限られることが認められた。以上から、細胞傷害性Tリンパ球を主体として感染初期に有効なSIV制御に至る個体においても、ウイルス中和能で検出し得ない形の充分な液性免疫応答が認められる可能性が示唆された。次の課題としてはエフェクター由来の可溶性ウイルス増殖抑制因子の特定とADCVIを担うサブセットの詳細な同定、及び受容体とその阻害法の特定を目標とする。
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