2011 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザウイルスM1タンパクの粒子内取込み様式に関する研究
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22890060
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
渡邊 理恵 山口大学, 農学部, 准教授 (50435715)
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Keywords | インフルエンザウイルス / マトリックスタンパク / 粒子内取込み |
Research Abstract |
本研究の最終目標は、インフルエンザウイルスの粒子形成の際に、マトリックスタンパク(M1)が多量体を形成した上で、ヘマグルチニン(HA)やノイラミニダーゼ(NA)といった膜タンパクと相互作用し、粒子に取込まれるという仮説を検討することである。平成23年度は、長い紐状粒子を作りやすいインフルエンザウイルスH3N2 Udorn株と、球形粒子のみを作るH1N1 WSN株の形の違いが、両M1の多量体形成能の違いに起因すると仮定し、免疫沈降法を用いて細胞内にて形成されたM1多量体の検出、形成能力の比較を行った。 1)N末端にFlagタグを付加したUdorn-M1、WSN-M1(それぞれFlag-UdM1,Flag-WSNM1)発現細胞をビオチン標識し、抗Flag抗体M2(Mouse McAb,Sigma)で免疫沈降後、Udorn,WSNともにほぼ同量のM1が沈降することを確認した。 2)Flag-UdM1とC末端HA付加Udorn-M1(UdM1-HA)を発現させた細胞を異なるpHの溶解液で溶解し、1)で使用した抗Flag抗体で免疫沈降後、ウサギ抗HA抗体(Sigma,H6908)を用いたウェスタンブロットにて検出した。細胞溶解液の組成は、pHの異なるTris-HC1(50mM,pH6.8,7.4,8.0)、NaCl(150mM)、NonidetP-40(1%)、Na Deoxycholate(05%)、EDTA(10mM)である。その結果、いずれのpHのTrisを用いた溶解液でもほぼ同量のudM1-HAが検出された。 3)Flag-WSNM1とC末端HA付加WSN-M1(WSNM1-HA)を用いて、2)と同様の実験を行い、共沈降してくるWSNM1-HAを検出した。1)のビオチン標識~免疫沈降実験で、Udorn、WSNともほぼ同量のFlag-M1が検出された(沈降した)にもかかわらず、共沈降実験において検出されるM1-HA量は、pH8.0 Tris溶解液を用いた時に最も多く、pH6.8 Tris溶解液を用いた時に最も少なかった。 以上の結果は、M1が細胞内で多量体を形成していること、また、紐状粒子形成株では環境pHに影響されにくい安牢な多量体を形成する可能性を示唆していると考えられる。今後は、計画どおりインフルエンザ様粒子(VLめを用いた粒子内M1/HA量比の検討を行い、多量体の安定性と粒子内M1量間に関連性が認められるか否かを評価する。
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