2010 Fiscal Year Annual Research Report
ミュータンス連鎖球菌の糖輸送関連遺伝子がバイオフィルム形成に与える影響について
Project/Area Number |
22890123
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
木村 智子 徳島大学, 病院, 医員 (20581367)
|
Keywords | 歯学 / う蝕 / 細菌 / 遺伝子 / バイオフィルム |
Research Abstract |
Streptococcus mutansの主な病原因子であるバイオフィルム形成ならびに酸産生にはスクロースが深く関与している。スクロース輸送機構の一つであるホスホエノールピルビン酸依存ボスホトランヌフェラーゼ系(PEP-PTS)においてスクロースを菌体内へ取り込むのに必須な酵素をコードするscrA遺伝子の役割を明らかにし,バイオフィルム形成をはじめとする他の病原因子との関連を解明していくことは,う蝕や歯髄炎の発症メカニズムを探る上で重要である。現在に至るまで,S.mutans UA159株を親株として作製したscrA遺伝子改変株を用いて,菌の初期付着との関連を中心に行った解析結果では,scrA遺伝子が菌の初期付着に関与していることが示されたが,付着から固着となりバイオフィルムが形成される過程においてのscrA遺伝子の関連については未だ明らかになっていないため,今回scrA遺伝子改変株を用いて,親株と遺伝子改変株が形成したバイオフィルム表層を観察し比較検討した。 ウシ前歯から約500μmの厚さの象牙質板を作製し,UA159株およびscrA遺伝子改変株の懸濁液に投入して37℃にて48時間嫌気培養することによって,象牙質板上にバイオフィルムを形成させた。走査型電子顕微鏡を用いてバイオフィルム表層を観察したところ,親株では,グリコカリックス様構造が往で細かな網状を呈したのに対し,scrA遺伝子改変株のそれは粗であった。 この結果より,scrA遺伝子がバイオフィルム表層の構造に関与していることが示唆された。 現在,共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて,バイオフィルム内部を観察し3次元方向での生菌・死菌の分布、密度、構造について検索中である。
|