2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22890128
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
新澤 直明 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (10583015)
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Keywords | ハマダラカ / マラリア / 媒介昆虫 / 分子遺伝学 |
Research Abstract |
マラリア原虫は、ヒト赤血球内に寄生し分化した後、蚊の一種であるハマダラカの吸血によってヒトからヒトへと運ばれる。一連の過程において、マラリア原虫はベクターであるハマダラカ体内で様々な宿主応答に晒される。本研究では、マラリア原虫がハマダラカとの共進化の過程で身につけているであろう、宿主応答への適応機構について解析を行う。モデル系であるハマダラカ(Anopheles stephensi)とネズミマラリア原虫による吸血実験系を用いて、ハマダラカとマラリア原虫の組み合わせによってハマダラカの媒介性が異なるかどうか比較解析を行った。3種のA.stephensiとネズミマラリア原虫Plasmodium bergheおよびPlasmodium yoeliiによるハマダラカへの感染を行った結果、あるA.stephensi(R系統)は参照系統と比較して、P.bergheiおよびP.yoeliiを媒介しにくいことが明らかになった。その中でも、P.bergheiはR系統にはほとんど感染せず、R系統はマラリア原虫の感染に強い感染抵抗性(refractoriness)を示すことが明らかとなった。これらの結果より、A.stephensi R系統とP.bergheiの組み合わせにより、「マラリア非媒介条件」の構築に成功した。この「マラリア非媒介条件」に対して、マラリア原虫あるいはハマダラカへの遺伝学的手法を用いることで、マラリア原虫のハマダラカ宿主応答への影響を評価することが可能である。次年度以降において、「マラリア非媒介条件」を用いた解析により、マラリア原虫のハマダラカ宿主応答に対する適応機構について言及可能な生物学的知見を見出すことが期待される。
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