2010 Fiscal Year Annual Research Report
軟骨変性疾患におけるモノカルボン酸トランスポーターの役割の解明
Project/Area Number |
22890181
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
吉村 健太郎 昭和大学, 歯学部, ポストドクター (10585699)
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Keywords | 軟骨 / 遺伝子発現 / 炎症性疾患 / シグナル伝達 / 活性酸素種 |
Research Abstract |
本研究の目的は、変形性関節症(OA)や関節リウマチ(RA)等の軟骨変性疾患におけるモノカルボン酸トランスポーター(MCT)の役割を明らかにし、MCTを標的とした新たなOAおよびRAに対する予防・治療方法の可能性を探ることである。マウス軟骨細胞を炎症性サイトカインで刺激し、細胞死を誘導するin vitro軟骨変性疾患モデルにおいて、申請者はMCTを阻害することで軟骨細胞死が強く抑制されることを発見し、MCT阻害が軟骨変性疾患の予防あるいは治療に有効であるとの仮説を立てた。本研究ではMCTがどのような機序で炎症性刺激による軟骨変性に関わるかを解明するために、培養軟骨細胞を炎症性サイトカインであるIL-1βで刺激し細胞死を誘導する実験系を用いて、MCTによる遺伝子発現制御メカニズムについて解析を行った。IL-1βで刺激した軟骨細胞ではMCTサブタイプの中でもMCT-1の発現が顕著に上昇していた。そこでsiRNAを用いて軟骨細胞におけるMCT-1の遺伝子発現を抑制したところ、IL-1βによって誘導される細胞死は有意に抑制された。炎症性サイトカインによって誘導される軟骨変性および軟骨細胞死において、活性酸素(ROS)産生酵素である食細胞型NADPH-oxidase(NOX-2)の発現が重要な役割を担っている。遺伝子発現解析の結果、MCT-1のsiRNAを導入した軟骨細胞ではNOX-2の発現が強く抑制されていた。さらに、NOX-2の発現は転写因子NF-κBによって制御されており、IL-1βで刺激した軟骨細胞で引き起こされるNF-κBの活性化がMCT-1のsiRNAを導入した軟骨細胞では有意に抑制されていた。これらのことから、IL-1βで刺激した軟骨細胞においてMCT-1はNF-κBの活性化とNOX-2の発現を介して細胞死の誘導に関与することが明らかとなった。
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