2011 Fiscal Year Annual Research Report
内因性カンナビノイドを産生する新規ホスファチジルイノシトール代謝経路の解明
Project/Area Number |
22890193
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
林 康広 帝京大学, 薬学部, 助教 (70582857)
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Keywords | リン脂質 |
Research Abstract |
GPR55は脳よりカンナビノイド第3の受容体として同定された。最近、私たちはsn-2位にアラキドン酸を持つ2-arachidonoyl-LPI,sn-1位にステアリン酸を持つ1-stearoyl-LPIが、Gタンパク質共役型レセプターGPR55のリガンドであることを明らかにした。PIを基質とするPLAI,PLA2は明らかになっておらず、GPR55のアゴニスト産生メカニズムは謎である。本研究では、PIを基質とするPLA1,PLA2の候補遺伝子の発現ベクターを構築し、その過剰発現細胞でPI-PLAI,PI-PLA2活性を測定したが優位な活性上昇は見られなかった。引き続き、その他の候補遺伝子についても同様の実験を行っている。 2-arachidonoyl-LPI,1-stearoyl-LPIを産生する新規PI代謝経路と、PIP2を産生するDAG/IP3経路は、PIの取り合いにより拮抗することが考えられる。HIV(ヒト免疫不全ウィルス)構成タンパク質の一部は、形質膜内表面のPIP_2と結合することで、感染細胞から効率良く出芽することが分かってきている。我々の研究において、あるリン脂質代謝酵素をノックダウンすると、HIVの膜融合活性が抑制されることが分かった。多剤併用療法の導入により、先進国におけるHIV感染者の死亡者数は減少したが、薬剤耐性株の出現、肝炎ウィルスとの合併感染により、人類はHIVを完全には克服できていない。そこで、既存の薬剤がターゲットとする分子(HIV逆転写酵素、プロテアーゼ)とは異なる新しい作用機序を持つ抗HIV剤の開発が望まれている。本研究の成果は従来の抗HIV剤とは異なり、脂質2重膜を標的とする作用機序であり、新たな抗HIV剤の開発につながる可能性がある。
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