2011 Fiscal Year Annual Research Report
腎臓足細胞の障害は不可逆か。足細胞特異的遺伝子欠損動物を用いた治療可能性の検討
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22890196
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邉 秀美代 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特任研究員 (30422314)
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Keywords | 慢性腎不全 / 腎足細胞 / p130-cas / cas L / アルブミン尿 / 遺伝子治療 / ナノキャリアー / 腎不全 |
Research Abstract |
【意義】慢性腎不全の初期にはアルブミン尿から蛋白尿へと症状が進行するが、この段階では可逆性があり、完全寛解が可能である。従ってこの初期段階で腎機能の修復を試みることが当研究の目的である。【具体的内容】当研究では腎臓足細胞が骨格筋や筋のようにアクチン細胞骨格のシグナル伝達経路を持つことに着眼した。即ち、足細胞のネフリンは細胞外部位を持つ免疫グロブリンのスーパーファミリーの一つであるが、この足細胞にアダプタータンパクであるp130-casが発現していることを見いだした。これは外力に依って細胞がストレッチするとSrc family kinaseに依ってリン酸化されてアクチンを含む下流シグナルへ伝達される。実際にSrc family kinaseであるFyn,ZAP20,Lynなどの発現が認められることは足細胞をウェスタンブロット、及びRT-PCRにかけることで確認した。つまりこれは力学的負荷を受けてリモデリングを繰り返している骨格筋組織と腎足細胞に共通するITAM(immunoreceptor tyrosine-based activation motif)を介したシステムが存在している可能性を示唆しており、即ち腎足細胞の機能障害を修復する治療の検討の意味があると考えられる。そこで足細胞特異的ネフリンプロモーターの下流にCreを発現したマウスと、p130-casの遺伝子両端に1oxPを発現したマウスを掛け合わせることで、p130-casを腎足細胞特異的にノックアウトしたマウスを作成した。このマウスの腎機能低下詳細を調べるために血液検査、免疫組織染色、アルブミン尿、蛋白尿を蓄尿で調べたが特に異常が認められず、一歳半の高齢マウスまで育てて調べたが特に変化はなかった。そこでin vivo共焦点顕微鏡で、アルブミン(MW68000)をEvans blue(MW960)でマーキングして腎尿細管のアルブミン濾過状況を生きた状態でWildtypeとノックアウトマウスで比較したが特に変化がなかった。従ってp130-cas機能を補償する経路の存在を考え、その経路を遮断するためにp130-casとcasLのダブルノックアウトマウスを作成した。【今後の課題】今後はこのp130-casとcasLの足細胞特異的ダブルノックアウトマウスを用いて、腎機能障害の詳細と、それに対する治療方法を検討する予定である。その際には当研究室で開発した遺伝子治療ナノキャリアーを使うことも検討している。
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