2010 Fiscal Year Annual Research Report
気管支上皮細胞の数量的バランスを制御するNotchシグナルの解析
Project/Area Number |
22890233
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
森本 充 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 助教 (70544344)
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Keywords | 呼吸器 / 発生・分化 / 細胞・組織 / シグナル伝達 / 発現制御 |
Research Abstract |
臓器はそれぞれ固有の形態、機能を獲得した分化細胞が、特定の場所に適切な数量バランスで存在することによって正しく機能する。この正確にプログラムされた組織構造、細胞分布の崩壊は様々な疾患の原因となりうる。研究代表はこれまで、呼吸器の上皮組織形成の基本原理を解明するために気管支上皮細胞の特殊分化とその分布パターン決定メカニズムを解明に取り組んできた。本研究では神経内分泌細胞の分化と数量的制御機構の解明に挑戦した。神経内分泌細胞は、気管支上皮で複数細胞の集まったクラスターとして観察される。この神経内分泌細胞クラスターの周りをSSEA-1^+細胞が覆っていることをマウス胎児の気管支で発見した。また、Notchシグナルを遺伝的に欠損させたマウスでは、神経内分泌細胞が異常に増殖し、SSEA-1^+細胞が消失していた。さらに、胎発生中の気管支上皮細胞で人為的にNotchシグナルを常時活性化させると、逆に神経内分泌細胞がほぼ消失し、ほとんどの上皮細胞がSSEA-1^+細胞になっていた。この結果から、神経内分泌細胞とSSEA-1^+細胞が、Notchシグナルを介して相反的な数量的制御を互いに及ぼしていることが示唆された。活性化型Notch認識抗体を使った解析の結果、SSEA-1^+細胞内でNotchシグナルが活性化していることが確認できた。まとめると、神経内分泌細胞はNotchシグナルを介してSSEA-1^+細胞の分化誘導もしくは維持に働き、SSEA-1^+細胞は神経内分泌細胞を抑制することでお互いの数量的バランスを決めていると考えられる。また一方で、SSEA-1^+細胞は新規に発見された細胞種であるため、その生物学的意義を解明する必要があった。そこで糖鎖抗原であるSSEA-1の生産の責任遺伝子の発現パターンをin situハイブリダイゼーションで追跡したが、有力視していたFUT4,7,9,10,11の5遺伝子は、いずれもSSEA-1^+細胞とは異なる分布を示した。そのため次年度以降は、SSEA-1^+細胞の機能解明のための異なる戦略を思案する必要がある。
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Research Products
(2 results)