2010 Fiscal Year Annual Research Report
miRNAによる腸管上皮細胞の恒常性維持とその機構の解明
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22890238
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中藤 学 独立行政法人理化学研究所, 免疫系構築研究チーム, 特別研究員 (20584535)
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Keywords | microRNA / 杯細胞 / M細胞 |
Research Abstract |
腸管上皮特異的miRNA欠損マウス(Dicer-KOマウス)の特徴的な表現型は杯細胞の減少であった。そこで杯細胞の分化に関与するmiRNAを見出すため、集密状態にて杯細胞へと分化する培養細胞株HT29-MTXを用いた検討を実施した。その結果、杯細胞の分化に伴い発現が変動するmiRNAを41個見出した。また、in vivoにおける発現も検討するため、杯細胞の割合が高い大腸上皮細胞と存在するがあまり数が多くない回腸上皮細胞におけるmiRNAの発現解析も実施した。これらの解析結果を統合し、最終的に数個のmiRNAが杯細胞の恒常性維持に関与する可能性を見出した。このDicer-KOマウスは週令を重ねるとヒトの潰瘍性大腸炎(UC)に類似した腸炎を起こす。UCの発症要因の一つに腸内細菌の関与が示唆されているため、細菌に共通する16S ribosomal RNAを認識する蛍光プローブを用いたFISH法により上皮細胞への細菌の侵入を検証した。対照群と比較し、Dicer-KOマウスでは陰窩付近まで細菌の侵入が確認された。加えて、糞便サンプルを用いたDGGE法により腸内細菌叢を検証したところ、Dicer-KOマウスでは炎症性腸疾患時に増加してくる細菌群が同様に増加していた。これらの結果はDicer-KOマウスが新規UCモデル動物として有効なツールになる可能性を示唆するものであった。 Dicer-KOマウスではパイエル板を覆う特殊な上皮である濾胞関連上皮層(FAE)で抗原を取り込むM細胞の異常を示唆する結果が得られた。そのためmiRNAがM細胞分化に関与していると考え、Dicer-KOマウスのFAEのトランスクリプトーム解析を実施し、対照群と比較した。その結果、これまで報告のある各種M細胞マーカーの発現がDicer-KOマウスでは減少しており、M細胞の分化にmiRNAが関与することが示唆された。
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