2010 Fiscal Year Annual Research Report
北東アジア世界における函館中華会館の歴史的意義とデジタル保存化の試み
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22904001
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Research Institution | 函館ラ・サール高等学校 |
Principal Investigator |
小川 正樹 函館ラ・サール高等学校, 函館ラ・サール高等学校, 教諭
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Keywords | 華僑 / 北東アジア / 調度品 |
Research Abstract |
国内の華僑社会には清末民初にかけての調度品が数多くもたらされた。明治時代から大正時代にかけて、日本は欧米文化を積極的に取り入れて生活の欧米化が進んでいったが、同時に多くの中国文化も取り入れていた。その中で、純中国様式の中華会館は多くの日本人に中国建築のすばらしさを紹介し、さらに内部の調度品は日本人に中国文化のすばらしさを伝える役割を果した。こうした中国文化は外国人居留地のみならず、黄檗宗寺院にも伝えられており、信仰の場においても中国文化が日本に伝えられた。しかし、こうして伝えられた貴重な中国文化の中には度重なる震災や戦災により永遠に失われたものも多い。幸運なことに函館では数多く〓大火にもかかわらず、函館中華会館とその調度品がほぼ創建当時の姿で残されてきた。 函館中華会館の中に入ると、回廊部分に吊り下げられた多数の瑠璃灯に魅了される。日本国内に残されている瑠璃灯を調査したところ、これほど大量のものが、一か所に集まって保存されている場所は函館しかなく、函館の大きな特徴ということができる。函館中華会館の調度品は長崎唐寺の調度品と似た傾向を持っており、会館の調度品と黄檗宗寺院の調度品に多くの共通点を見出すことができる。中華会館の中庭には氷裂式組子が組み込まれた欄間が巡らされている。この氷裂式組子については、日本の家具にはほとんど見られない形式であるが、函館中華会館にはこの氷裂式組子を使用した調度品が数多く残されており、函館中華会館の一つの特徴といえる。函館中華会館にはいわゆる黄檗天井、蛇腹天井になっている部分がある。中庭をめぐる回廊の部分は全て黄檗天井で、それ以外の部分は垂木の天井となっている。黄檗天井や氷裂式組子は華僑社会、華僑社会と深い関係がある黄檗宗寺院に特徴的な形式であるということができる。 この貴重な文化財を今後も守り続けていくことが現在の我々の義務であると同時に、中国文化を通じた日本の近代化をもう一度考える必要がある。
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