2010 Fiscal Year Annual Research Report
透析患者における経口分子標的抗がん剤の適正使用法の確立
Project/Area Number |
22928009
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
新迫 恵子 京都大学, 医学部附属病院・薬剤部, 薬剤師
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Keywords | ソラフェニブ / 血液透析 / 腎細胞がん |
Research Abstract |
研究目的 腎細胞がん患者における分子標的薬ソラフェニブの効果および副作用モニタリングを行うとともに、薬物血中濃度解析を実施することにより、透析患者における分子標的薬の安全な使用法の確立をめざす。 研究方法 本研究は、京都大学大学院医学研究科・医学部および医学部附属病院医の倫理委員会で承認を得て行った(G-260)。患者に対しては十分なインフォームドコンセントを行い、文書による同意を得て実施した。京都大学医学部附属病院泌尿器科の入院患者を対象に、薬物血中濃度をHPLC法によって測定した。また、薬剤管理指導業務や電子カルテ調査を通して副作用モニタリングを行った。 研究成果 血液透析患者1例と非透析患者4例。透析患者は50歳代、腎細胞がんの男性。ソラフェニブは低用量200mg/日から開始し、常用量の800mg/日まで漸増したが、副作用は特に見られなかった。一方、非透析患者ではすべての患者に副作用が見られ、Grade3以上では肝機能障害、手足症候群、高血圧があった。薬物血中濃度は、非透析患者のソラフェニブAUC_<0-12>は42.3mg h/L (18.1-62.7)、M-2(ソラフェニブの活性代謝物)のAUC_<0-12>は10.0mg h/L (1.9-21.4)、透析患者のソラフェニブAUC_<0-12>は51.2mg h/L、M-2のAUC_<0-12>は3.7mg h/Lであり、大きな差は認められなかった。透析前後におけるソラフェニブ血中濃度は1.46、3.38mg/Lであり、透析による除去はないと思われた。ソラフェニブ開始後202日にPDと診断されるまでは一定の効果があった。本症例では、透析患者においてもソラフェニブの常用量投与は可能であったが、一例の結果であるため、症例数を増やして検討を重ねる必要があると考える。
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