2022 Fiscal Year Annual Research Report
The study of the Brass History and the Brass Road for Japan
Project/Area Number |
22H00024
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
西山 要一 奈良大学, その他部局等, 名誉教授 (00090936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 繁生 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (00752370)
植田 直見 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10193806)
桐野 文良 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 教授 (10334484)
野尻 忠 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, 室長 (10372179)
魚島 純一 奈良大学, 文学部, 教授 (10372228)
早川 泰弘 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, その他部局等, 副所長 (20290869)
今津 節生 奈良大学, 文学部, 教授 (50250379)
東野 治之 奈良大学, その他部局等, 名誉教授 (80000496)
関根 俊一 奈良大学, その他部局等, 特別研究員 (80154649)
望月 規史 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部企画課, 主任研究員 (80635251)
成瀬 正和 東北芸術工科大学, 文化財保存修復研究センター, 教授 (90778630)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 黄銅 / 鍮石・真鍮 / 古代・中世の鍮石製品 / 近世の真鍮製品 / 自然科学と人文科学の学際研究 / 黄銅伝来の道「Brass Road」 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究費により固定型蛍光X線分析装置・BRUKER社製M4TORNADOを購入し設置した。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、BRUKER社の機器製造と輸送に予期以上の時間を要し納品は2022年12月となったため2023年3月現在、初期運転中であり分析成果は少数に留まった。今後、順調に稼働すれば分析能力の向上が期待される。 本年度の科学分析は奈良大学に既設の固定型蛍光X線分析装置(EDAX社製EAGLE XXL-NR)、携帯型蛍光X線分析装置(BRUKER社製TRACER5i)および研究分担者所属機関の分析装置を使用し黄銅製の考古資料、美術工芸資料の成分分析を行った。従来の黄銅泥使用の紺紙金字経では黄銅のみか金が10%程度加えられるのが通例であったが、當麻寺西南院所蔵の紺紙金字経では金90%に黄銅10%が加えられる特異な例が判明した。その他紺紙金字法華経、紫紙金字金光明最勝王経(国分寺経)などの調査を行った。個人蔵の朝鮮半島・李朝時代の象嵌銘刀の分析では、象嵌に黄銅が使用され当地域における黄銅利用が明らかになった。MIHO MUSEUM所蔵の漆工品では黄銅箔が使用され、中・近世漆工品に黄銅が利用されていることを明らかにした。そのほか、和歌山県立博物館蔵の経筒と経典、和歌山市遺跡出土煙管、寛永通寶などの分析を行い新たなデータを蓄積した。これら分析調査は史料学、美術史学、考古学による調査・考察とともに進めた。 海外の黄銅に関する情報は、韓国・中国・イタリアなどの研究協力者の助力を得て、分析報告書や論文を収集した。 なお、本年度に予定していた唐招提寺蔵経典コレクション、奈良・奈良町遺跡などの出土資料の分析は2023年度に繰り越した。 研究成果の公開・公表については、新型コロナウイルス感染拡大の影響により公開講演会は中止し、奈良大学を会場に「寛治元年銘経筒の検討会」を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規に購入の蛍光X線分析装置M4TORNADOは新型コロナウイルス感染拡大の影響で、製造・納品が遅れ2022年12月になったために、当該機による分析データは多くを得ることができなかった。しかし、奈良大学既設のEAGLE XXL-NR、携帯型蛍光X線分析装置TRACER5iおよび研究分担者所属機関の蛍光X線分析装置やX線回折分析装置などの器機を使用して、黄銅製の考古資料、美術工芸資料の成分分析を行った。分析対象は、東大寺龍松院所蔵、當麻寺西南院などの紺紙金字経、和歌山県立博物館所蔵の経筒と経典、MIHO MUSEU所蔵の漆工品や金銅佛などで、当初計画の90%程度を実現することができた。 しかし唐招提寺所蔵紺紙金字経コレクションの悉皆分析、奈良・奈良町遺跡、大阪・堺環濠都市遺跡などの出土銅合金資料・鋳造関連資料の悉皆分析についてはそのリスト作りなどの準備段階に留まり、分析を実施するには至らず次年度に持ち越しとなった。 研究成果の公開・公表については奈良大学を会場に研究会を開催したが、公開講演会は新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催を見送った。
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Strategy for Future Research Activity |
新規に購入した蛍光X線分析機M4TORNADOを恒常的に稼働し黄銅資料の分析を進める。未着手の唐招提寺所蔵紺紙金字経コレクションの悉皆分析、奈良・奈良町遺跡、大阪・堺環濠都市遺跡などの出土銅合金資料・鋳造関連資料の悉皆分析を行い各遺跡・各時代における黄銅製品の実態を把握する。また、日本の博物館・美術館・社寺等所蔵の韓国、中国、東南アジア、南アジアの金属工芸品、漆工品などを所蔵者の協力を得て科学分析を行うとともに、韓国の研究協力者・所蔵者の協力のもと現地での調査・分析を行い、東アジアの黄銅利用の実態を明らかにする。 分析対象の資料は考古学資料、美術工芸資料であり、それぞれの専門分野からの研究も深める。これら資料の科学分析と並行して、文化財の非破壊分析の有効性や黄銅資料分析法の確立、信頼性の向上を目指す。 史料学(文献史学)からの研究では、日本・韓国・中国等の鍮石・真鍮・黄銅関連の古記録の収集とその歴史的位置付け、また記録史料と遺跡出土資料や社寺などに伝世する美術資料との相互の関連について考察・同定を試みる。 さらに日本の黄銅製品と類似する韓国および中国の資料を両国の文化財科学、史料学、考古学、美術工芸史学の研究者の協力を得て科学分析データおよび記録データの収集を行い、加えて紀元前より黄銅製品が存在するヨーロッパの諸例のデータも、イタリア・ドイツ・イギリスの研究協力者の助力を得て収集し、日本の黄銅製品との共通性と差異、西アジアに発すると言われる黄銅の起源とその日本への伝来の道(Brass Road)を考察する。 研究成果の公開・公表については奈良大学を会場に研究会と公開講演会を開催する。また、研究成果は年次報告書として刊行し本研究協力者、協力機関、博物館、美術館、大学等に配付する。公開講演会には韓国の研究者を招請する予定である。
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