2022 Fiscal Year Annual Research Report
中世東アジア海域の地域社会と琉球帝国-集落・信仰・技術-
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22H00025
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
村木 二郎 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (50321542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 康之 県立広島大学, 地域創生学部, 教授 (10733272)
関 周一 宮崎大学, 教育学部, 教授 (30725940)
池田 栄史 國學院大學, 研究開発推進機構, 教授 (40150627)
松田 睦彦 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (40554415)
齋藤 努 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (50205663)
中島 圭一 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (50251476)
荒木 和憲 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (50516276)
渡辺 美季 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60548642)
主税 英徳 琉球大学, 国際地域創造学部, 講師 (60910510)
田中 大喜 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (70740637)
黒嶋 敏 東京大学, 史料編纂所, 教授 (90323659)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 琉球 / 八重山 / 宮古 / 奄美 / 集落 / 陶磁器 / 細胞状集落 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、琉球の周辺地域から古琉球史を見つめ直すことを目的としている。そのため、周辺地域の資料を渉猟・蓄積し、研究メンバー間で情報を共有する。研究メンバーは考古学と文献史学の専門家が中心である。当該研究分野を牽引してきたのは文献史学であるが、新出資料は考古学の方が圧倒的に多いため、考古班の現地調査情報を文献史班に提供し、これまでの研究と照応させて解釈を重ねていくことになる。 初年度である2022年度は新型コロナ禍が収まりつつあったものの、まだ離島での調査が充分に受け入れてもらえる状況ではなかった。そのため、琉球の陶磁器出土状況と比較検討する資料を日本列島内でも作成するという目的で、広島県草戸千軒町遺跡出土の貿易陶磁器の悉皆調査をおこなった。当遺跡の出土陶磁器は遺構ごとの細かい情報も得られるため、遺跡内での傾向もつかめるという強みがある。さらに中世を代表する集落遺跡であることから、比較資料としては申し分ない。遺物量が多かったため時間はかかったものの、年度内に全点の調査を終了した。 6月には中世学研究会との共催でシンポジウム「中世・港の景観」を開催し、田中大喜「河口域の中世港湾」などの報告があった。また中島圭一・村木二郎の司会で討論をおこなった。11月には宮古島でシンポジウム「宮古島と琉球帝国」を開催し、村木二郎「琉球帝国と宮古島の中世」、佐々木健策「宮古島の中世遺跡と陶磁器調査」、久貝弥嗣「宮古諸島におけるグスク時代の展開」、島津美子「「金頭銀茎簪」の材質分析」、小野正敏「集落遺跡が語る八重山の歴史」の報告と、それを踏まえた討論をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である2022年度は、考古班の陶磁器調査としては離島調査が困難であったため、日本列島での比較資料を蓄積するために広島県草戸千軒町遺跡出土資料を悉皆調査した。1万点を超える中国産白磁・青磁等のデータを蓄積することができ、日本列島でも瀬戸内地域の代表的なデータを収集することができた。琉球出土陶磁器の特徴がより鮮明になるという手ごたえを得ており、今後の調査方法としても琉球圏内と日本列島内の資料を併行して調査する意義を見いだした。 文献史班と分析調査班は、康熙帝賜琉球国王尚貞勅諭写の外筒について共同調査を実施し、これが中国で作られたものか琉球での製作によるものかなどを塗料などの材質から追究する可能性を探った。こうした試みはこれまでにないもので、今後の研究の進展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では琉球を周辺の島々から見直すが、文献史料が希薄な地域であることから、それを補うために考古資料を蓄積することに研究展開がかかっている。これまで、八重山・宮古に残る細胞状集落遺跡や石囲集落遺跡を踏査し、一部図化してきたが、これらの資料から当該地域の特徴が浮かび上がった。またその集落の消長を探るためには出土陶磁器の全点分類・カウント調査が有効であることもわかった。この方針を継続して資料蓄積をはかるため、未調査の集落遺跡である宮古島市与那覇遺跡、喜界町手久津久遺跡群川寺遺跡出土の陶磁器調査を実施する必要がある。所蔵機関との連携は取れているため、コロナ禍の合間を縫って調査を実施したい。 また、日本列島内でも比較対象資料を蓄積する必要があるため、ある程度の出土量が確認できる良好な遺跡を抽出し、調査が可能な環境を整えるために所蔵機関との連携を図っていくよう試みる。
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