2022 Fiscal Year Annual Research Report
Interdiciplinery study on dispersal and adaptation of the Late Paleolithic Homo sapiens in Okinawa Islands
Project/Area Number |
22H00027
|
Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 祐樹 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究主幹 (50804126)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 麦野 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (10582760)
海部 陽介 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (20280521)
澤浦 亮平 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 協力研究員 (20816201)
水野 文月 東邦大学, 医学部, 講師 (50735496)
石原 与四郎 福岡大学, 理学部, 助教 (80368985)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 沖縄島 / サキタリ洞 / 旧石器時代 / 炉跡 / 久米島 / シカ化石 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2023年度は、沖縄島のサキタリ洞遺跡と久米島の下地原洞穴遺跡で発掘調査を行った。サキタリ洞遺跡では更新世の炉跡とみられる遺構を発見し、その周辺から貝器1点や食料残滓とみられる動物遺骸を少量ながら回収し、堆積層の微細形態等を分析するための土壌サンプリングを行った。また、洞外に新たに調査区を設けて掘削を進めたところ、洞内の区画と対応する可能性の高いトラバーチンを確認し、若干の炭化物を回収したが、明らかな人為活動の痕跡は今のところ認められていない。この下位には土石流堆積とみられる石灰岩礫を多量に含む堆積物が確認されており、本洞におけるヒトの居住と堆積層形成の関係についての情報を今後、探求していく予定である。下地原洞穴では、1980年代の調査区に隣接した区画を調査し、グスク時代と推測される焚火痕跡、水性堆積、これらの下層から保存状態良好なシカ化石を発見した。現在のところ旧石器時代の明確な人為活動痕跡は認められていない。しかし、沖縄各地の洞窟で発見されるシカ化石包含層の成因はこれまで検討されておらず、こうした情報を本遺跡から得ることで、シカの生息年代や洞窟におけるシカ化石包含層の形成要因の探求を進め、ヒト渡来や洞窟利用との関わりを検討していく材料としたい。また、既存の資料整理を進めるため、CTデータ分析ソフトを新規導入してサキタリ洞出土貝器の分析を進めた。成果発表としては、沖縄島における旧石器時代の資源利用や絶滅シカとヒトの関わりに関して国際学会発表を行ったほか、絶滅シカの系統分析や島におけるヒト渡来の影響に関する国際共著論文を出版し、沖縄先史時代の海洋進出や貝器利用に関する論文寄稿を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画に基づいて発掘調査を実施し、一定の成果を出すことができた。久米島では、ヒト痕跡や旧石器時代の海産物利用に関する成果を期待したものの、今年度調査では目標達成には至らなかった。しかし、更新世シカ化石包含層を確認し、保存状態の良好なシカ化石を発見したことは大きな成果である。琉球列島における旧石器人の渡来とシカ絶滅との関係は、ヒトの島嶼適応プロセスと自然への影響という視点で国際的にも注目される研究テーマである。この視点で、私たちは化石シカの特性を理解した上でヒト捕食に対する応答を推測してきた。また、沖縄県各地の洞窟で発見されるシカ包含層について、これまで堆積メカニズムが検討されたことは皆無である。久米島において、化石シカの特性や堆積層形成因を検討することで、化石シカに関する新たな知見が得られると期待している。2023年度以後、シカ包含層の発掘を進めると同時に、同遺跡での人為痕跡の探索を進める計画である。遺物分析に関しては、申請予算からの減額により一部機器の購入が実現できなかったため、人骨の形態分析やマイクロウェア分析の開始は遅れているが、2023年度に本機器を導入して進める計画である。一方、絶滅シカとヒトの関係に関する充実した成果を発表することができたため、計画全体としては順調に進んだと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
久米島の調査では目標と異なる成果が得られているが、発掘調査で予定通りの成果が得られない可能性は計画当初から想定済みであり、そのために旧石器人の島嶼適応として動物との関係を解明目標に含んでいる。久米島やサキタリ洞の新区画で明確な旧石器時代の人為活動痕跡が発見できなかったことは残念ではあるが、それぞれシカ絶滅やシカ化石集積プロセスの解明、土石流等の環境因子と遺跡形成に関する情報を得られる見込みがあり、計画全体としては大きな修正は必要ない。また、この方針転換にあたって堆積学の専門家による検討が重要であるため、堆積学の専門家を分担者として迎えいれた。また、申請予算からの減額によって一部機器の導入が遅れたが、2023年度に機器導入できる計画である。全体として5カ年計画の初年度であるため、いずれも十分に後れを取り戻せる段階である。
|
-
[Journal Article] Dwarfism and gigantism drive human-mediated extinctions on islands2023
Author(s)
Roberto Rozzi, Mark V. Lomolino, Alexandra A. E. van der Geer, Daniele Silvestro, S. Kathleen Lyons, Pere Bover, Josep A. Alcover, Ana Benitez-Lopez, Cheng-Hsiu Tsai, Masaki Fujita, Mugino O. Kubo, Janine Ochoa, Matthew E. Scarborough, Samuel T. Turvey, Alexander Zizka, Jonathan M. Chase
-
Journal Title
Science
Volume: 379.6636
Pages: 1054-1059
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
[Journal Article] Ruminant inner ear shape records 35 million years of neutral evolution2022
Author(s)
Bastien Mennecart, Laura Dziomber, Manuela Aiglstorfer, Faysal Bibi, Daniel DeMiguel, Masaki Fujita, Mugino O. Kubo, Flavie Laurens, Jin Meng, Gregoire Metais, Bert Muller, Maria Rios, Gertrud E. Rossner, Israel M. Sanchez, Georg Schulz, Shiqi Wang, Loic Costeur
-
Journal Title
Nature Communications
Volume: 13
Pages: 7222
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
-
-
-