2022 Fiscal Year Annual Research Report
Research on Moderate Islam in the Non-Arab World: From the Cases of Indonesia, Pakistan and Turkey
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22H00034
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東長 靖 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (70217462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤堀 雅幸 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (20270530)
高尾 賢一郎 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (20785480)
井上 あえか 就実大学, 人文科学部, 教授 (30388988)
新井 和広 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 教授 (60397007)
ダヌシュマン イドリス 立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (70631919)
久志本 裕子 上智大学, 総合グローバル学部, 准教授 (70834349)
山根 聡 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 教授 (80283836)
三沢 伸生 東洋大学, 社会学部, 教授 (80328640)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 穏健イスラーム / スーフィズム / 急進イスラーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、イスラーム法に基づくイスラーム像に対して、スーフィズムに基づくもう一つのイスラーム像を描く国々があることを、インドネシア・パキスタン・トルコの3か国を例に実証的に示し、その内容を解明することである。 本研究においては、A. 原典分析、B. 「インドネシア型イスラーム」(インドネシア)、「寛容のイスラーム」(パキスタン)、「アナトリア的イルファーン」および「トルコ=イスラーム総合論」(トルコ)に関する理念の解明、C. 上記概念の発信・実践についての、フィールドワークを通じた分析、D. 3つの国々の「穏健イスラーム」の実態の比較・統合に基づく検証、を行う。 本研究は、5班体制をとる。具体的な事例研究を行う①インドネシア班・②パキスタン班・③トルコ班を設けるとともに、これらの国々が仮想敵としているアラブ(とくにサウジアラビア)を扱う④アラブ班を設ける。さらにこれら各国のイスラーム理解に大きな意味をもつスーフィズムそのものを主として検討する⑤スーフィズム・イスラーム思想班を、理論面を扱うものとして設けている。 研究手法としては、1)文献研究、2)現地調査を合わせ用い、3)研究会を実施し、4)国際発信、5)社会還元を行う。 1)の文献研究に関しては、Religious Moderation(『宗教的穏健化』)というテキストの輪読会を実施した。2)の現地調査は、1~2月にインドネシアの首都ジャカルタで実施した。3)の研究会は、インドネシアの事例を中心に計3回実施した。4)国際発信と5)社会還元は、両者を兼ねる形で、計3回実施した。この際、調査対象国自身への研究成果発信・還元も行うよう留意した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である令和4年は、インドネシアを主たる対象として研究を遂行した。1)文献研究は、The Ministry of Religious Affairs Republic of Indonesia, Religious Moderation, Jakarta: The Ministry of Religious Affairs Republic of Indonesia, 2020およびその原本であるインドネシア語版の輪読を、11月11日、1月6日、2月10日に実施し、「宗教的穏健化」に関するインドネシア宗教省の公式説明の把握に努めた。また、現地調査の際に宗教的穏健化に関する書籍数十冊の恵贈を受けた。2)現地調査は、1月下旬から2月上旬にかけて実施し、宗教的穏健化政策を企画立案したOman Fathurahnan教授、責任者として実施にあたった前宗教大臣、宗教的穏健化政策を若手に教育するためのConveyプログラム責任者らから直接聞き取り調査を行った。 3)研究会は、5月20日(全体研究方針策定)、6月18日(Oman、岡本による発表)、同25日(Omanによる発表)、3月29日(比較考察の観点から、久志本によるマレーシアの発表とイドリスによるトルコの発表)の3回実施した。 5)社会還元は、4)国際発信も兼ねて、3回実施した。第1回(7月26日)は、トルコ・ウスキュダル大学スーフィズム・サマースクールにおいて、第2回(12月3日)は、「京都大学エグゼクティブ・リーダーシップ・プログラム」において、東長がインドネシアの事例を中心に穏健イスラームについて講義を行った。第3回(3月8日)は、インドネシア副大統領Maruf Amin氏の宗教間対話と穏健イスラームに関する講演会の場で、同じく東長がスーフィズムを核とするイスラーム思想研究の立場からコメントを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
インドネシアに焦点を合わせた今年度の研究は、読書会を核とする文献研究と、政策立案者に対するインタビューを中心とする現地調査を組み合わせて、有効に遂行することができたと思っている。今年度は、「宗教的穏健化」政策を企画立案したOman Fathurahnan教授と、「インドネシア型イスラーム」政策にくわしい岡本正明教授(京都大学東南アジア地域研究研究所)をゲスト講師に招いて、話題を提供してもらった。その有効性に鑑み、次年度より岡本教授を研究分担者に加えることとし、さらなる共同研究の充実を図る。
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