2023 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル・インバランスの行方:国際金融論と国際貿易論の統合アプローチ
Project/Area Number |
22H00058
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 浩介 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (30263362)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 智之 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (50362405)
藤原 一平 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (50736874)
高橋 修平 京都大学, 経済研究所, 准教授 (60645406)
脇 雄一郎 青山学院大学, 経済学部, 准教授 (20845101)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | グローバル・インバランス / 不完全金融市場 / 貿易 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際資本規制の基礎となる最適なマクロ経済政策問題について理論的な研究を進めた。具体的には、情報の非対称性の問題やコミットメントの欠如によって生じる資産市場の不完全性のもとで、どのような政策をとるべきかについて検討した。分析手法の開発にも着手した。具体的には、政府の最適化問題を解く手法として、連続時間の最適制御理論の応用可能性について研究を開始した。
日本企業に関する包括的なミクロデータを用いて、企業マークアップ、賃金マークダウンの計測を行った。企業マークアップとは、企業が生産する財価格と生産限界費用の差、賃金マークダウンは、企業が労働者に対して支払っている賃金と労働の限界生産力価値の差である。分析の結果、マークアップは長期下落傾向、賃金マークダウンは長期上昇傾向にあることが確認された。特に、国際市場において中国企業との競争にさらされている産業においてはマークアップが長期に下落傾向があることが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不完全金融市場とその下における最適政策に関する理論研究は順調に進んでいる。それに重ねて、実証分析も新たな結果が得られたという意味で、全体として研究プロジェクトは概ね順調に進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、資産市場の不完全性とその結果としての経済主体の異質性のもとでの最適な経済政策について研究を行っていく。理論的には、連続時間モデルの最適制御理論の経済問題への応用を考えていく。離散時間モデルに比べると連続時間モデルは、解析的に解きやすいという性質を持っているために、導かれた最適政策の質的な特性を分析する際には、より有用な手法であると考えている。特に、近年進展してきたmean field game理論の応用についても検討を行っていく予定である。
マークアップの変動と経済全体の生産性(TFP)の変化についてさらに深掘りする予定である。日本は、マークアップの長期下落、実質為替レートの長期下落、生産性上昇率の低下がほぼ同時期に発生している。また、同時期に経常収支の黒字要因の主役が貿易収支から所得収支に変化している。これらの間にどのような関係があるかを明らかにすることは、非常に意義があると考えている。マークアップが内生的に変化するモデルについては、その理論的含意が実証的にサポートされるかについて検証する。
|