2022 Fiscal Year Annual Research Report
An Investigation of the Transformative Factors of Nationalism in a Societies with Rapidly Growing Immigrant Populations: Evidence from Intertemporal and International Comparisons
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22H00074
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田辺 俊介 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30451876)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 遼 北九州市立大学, 法学部, 准教授 (10546328)
松谷 満 中京大学, 現代社会学部, 准教授 (30398028)
阪口 祐介 関西大学, 総合情報学部, 教授 (50589190)
永吉 希久子 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (50609782)
濱田 国佑 駒澤大学, 文学部, 准教授 (50634523)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 反移民意識 / 脅威認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題としては初年度ではあったが、継続調査プロジェクトであることから先行調査のデータ分析によって複数の研究実績を得ている。 例えば沖縄における米軍基地問題について、その意識の世代間とその要因を実証的に示したものである。2017年の沖縄調査を分析した結果の具体的な知見としては、①「マス・メディア不信」の強さ、②「反米感情」の弱さ、③「安全保障に対する危機意識」の強さ、④「沖縄の経済は米軍基地が無いと成り立たない」という認識の強さ、という若い世代の4つの特徴が米軍基地に対する容認的な傾向を生む要因となっていた。またその中でも最も大きな世代差をもたらす要因となっていたのは、④の経済的な基地依存の認識であった。 また欧州の研究で論じられている新自由主義が反移民意識との関連について、日本でもそれが当てはまるかを検討した。結果、日本では極右政党の存在が希薄で、外国人居住率が低いなどの特徴がありつつも、欧州と同様に新自由主義的態度が反移民意識と関連することが示された。この結果は、新自由主義と反移民的な態度との関連は必ずしも社会的コンテクストに依存せず、むしろ移民への「福祉依存」などのステレオタイプがその関連を促進することを示唆する。 他にも2010年代における外国人に対する「脅威」の認識がどのような要因によって生み出され、どのように排外主義と結びつくのかを分析した結果、社会不安が「脅威」の認知に影響し、その「脅威」認知を媒介して排外主義に対して影響することが確認された。 さらに本プロジェクトで実施した調査のうち、2017年に実施した全国調査並びに沖縄調査のデータについてはSSJDA(Social Science Japan Data Archive)への寄託手続きを行っており、以前に寄託した2009年・2013年調査とともに、今後研究者コミュニティにおいて広く利用可能となっていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
継続調査プロジェクトとして先行調査のデータ分析は順調に進んでおり、各種業績が出ている。また本課題の主眼である2025年の国際比較調査に向けて、2021年調査データの分析とそれに伴う学会報告、さらには複数の時系列比較分析プロジェクトなどを実施しており、全体としてほぼ予定通り、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度以降については、コロナ禍による渡航制限などもほとんどの国々で緩和されたことから、排外主義などのナショナリズムと政治意識の関連構造についての(欧米モデルとは異なる)「東アジアモデル」の構築という目標のために、まず第一の比較対象である韓国に赴き、韓国の研究協力者との研究交流を深めつつ、同時に可能な限り現地での資料収集などを実施する。 また研究会についても、これまでは主にZOOMを利用してきたが、班別研究会などについては少人数で集まることが可能なことから、対面による密な研究会を実施するなどして、より生産的な研究会運営を目指す。 加えて継続調査の分析結果を様々な学会で報告することを通じて、現状の調査項目において追加すべき点、修正すべき点などについて、研究グループ内の意見だけでなく、できうる限り関連領域の多くの研究者の意見を伺うことで、よりよい調査内容となるようにブラシュアップを試みる。
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