2023 Fiscal Year Annual Research Report
An Investigation of the Transformative Factors of Nationalism in a Societies with Rapidly Growing Immigrant Populations: Evidence from Intertemporal and International Comparisons
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22H00074
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田辺 俊介 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30451876)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 遼 北九州市立大学, 法学部, 准教授 (10546328)
松谷 満 中京大学, 現代社会学部, 教授 (30398028)
阪口 祐介 関西大学, 総合情報学部, 教授 (50589190)
永吉 希久子 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (50609782)
濱田 国佑 駒澤大学, 文学部, 准教授 (50634523)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 排外主義 / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、これまでの継続調査データの再分析とともに、2025年度の国際比較を含む新規調査に向けた各種準備作業を行った。 まず日本社会における排外主義や同化主義の問題について、そのメカニズムを明確化するための各種検討を行った。例えば国民の成員条件について、従来から検討されてきている排外主義的態度の強弱ではなく、そのばらつきへの影響を検討した結果、民族的条件と市民的条件の正の交互作用効果が確認された。あるいは若く高学歴の市民ほど移民の心理的同化を求める態度をとっていることなど、欧米データ分析結果とは異なる属性との関連構造が示唆された。 また政治意識・行動の分析としては、比較的高階層者が(長期政権を担う)自民党に投票して支持する傾向がある一方、比較的低階層な人々(女性・特定世代など)ほど政治的に不活性な傾向が確認された。またナショナリズムとの関連としては(いわゆる「ナショナリズム」の弱いリベラル型と比べて)親欧米型や国粋型は自民党にアイデンティファイしやすく、無党派にもなりにくい。低階層者や非ナショナリストが米国では民主党支持につながりやすい傾向と比較すれば、階層的地位やナショナリズムと政治意識・行動の関連については、各国の(政治・社会)状況に基づく差異を考慮する必要性が示された。またポピュリスト態度の分析を行った結果、まずポピュリスト態度の因子構造は「人民主権」と「反エリート/多元主義」の2因子解となり、またそのポピュリスト態度が(世界的には右派ポピュリズム運動が目につくが)日本においては山本太郎氏のような左派ラディカルに位置づけられるような政治家への支持と結びついていた。 以上のように各種分析結果は、欧米データで出された結果との差異が大きいことから、2025年度の韓国との比較分析を行うことで、欧米モデルとは異なる東アジアモデルを提示できる可能性が十分にあると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2009年、2013年、2017年、2021年に実施した先行調査のデータ分析は順調に進んでおり、2023年度については査読論文、国際協力論文も含めた各種業績が出ている。その上で複数の時系列比較分析プロジェクトなども引き続き実施しており、全体としてほぼ予定通り進展している。 また本課題の主眼である2025年の国際比較調査に向けて、ネット調査とはなるが日本と韓国においての予備調査も実施した。その予備調査を実施するに際して、国際比較調査として踏まえるべき各種問題も確認できた。 加えて2017年の全国調査と沖縄調査のデータについてデータアーカイブ(SSJDA)への寄託作業を行っており、2024年度には一般公開される予定となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度については、従来通りに各種研究を進めていくとともに、来年度の実査に向けた準備を加速する予定である。まず2023年度に実施した日韓の予備調査データを分析することを通じて、2025年度の実査で用いる調査項目を確定していきたい。さらにその分析から得られた成果についても、可能な限り発表・報告する予定である。 また継続調査の分析結果についても、引き続き様々な学会や研究会で報告していく予定である。その中で、研究グループ外の研究者からも追加すべき、あるいは修正すべき調査項目を精査していきたい。 そのための研究会については、全体研究会は次年度の実査準備に注力しつつ、班別研究会などをより活性化し、密な研究会を実施するなどことで、より生産的な研究会運営を目指す。
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