2022 Fiscal Year Annual Research Report
NANTEN2望遠鏡サブミリ波CI観測による超新星残骸ガンマ線起源の斬新な追究
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22H00152
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
福井 康雄 名古屋大学, 理学研究科, 名誉教授 (30135298)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 栄俊 岐阜大学, 工学部, 助教 (50739472)
立原 研悟 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (70432565)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 星間物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、高エネルギー宇宙線を加速していると考えられる超新星残骸(SNR)に対し、検出されたTeVガンマ線をハドロン起源のものとレプトン起源のものに分離する手法を確立し、RXJ1713 SNRに対し、その割合をおよそ6:4よ求めることに成功した。SNRと相互作用する星間陽子の柱密度(Np)を中性水素HIやCO輝線の電波強度から求め、ハドロン起源のガンマ線の指標とする。ここでHIの光学的厚みの補正も適用する。一方シンクロトロンX線のカウント数(Nx)をレプトン起源の指標とし、ガンマ線カウント(Ng)をこれら2つの線型結合で表されるとし、観測ピクセルに対して3次元フィッティングを施すことで、2つの項の寄与の割合を求めることができる。2022年度からこの手法をさらに他のSNRに対しても適用し、その多様性や時間進化の影響を調べた。まずはRXJ0852に対して、ATCT+Parkes望遠鏡のHI-データと、NANTEN望遠鏡のCOデータからNpの分布を求めた。NxはSuzaku衛星のデータを用いた。これらとH.E.S.S.ガンマ線望遠鏡で得られたNgと比較した。その結果、両成分の比率はおよそ5:5であることがわかった。これはSNRガンマ線に対し、ハドロン起源のものとレプトン起源を分離できた2例目である。また、この3次元フィットについて、単一平面ではなく、2-3平面の重ね合わせとして表現する新たな手法を試し、よりフィッティングエラーが小さくすることができた。またこれはシェル型のSNRの内側と外側で、ハドロン起源のものとレプトン起源の割合が変化している可能性を示唆している。これらの結果を論文にまとめApJ誌に投稿、2024年に出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
NANTEN2望遠鏡は、世界的なパンデミックの影響による休止から復帰するための作業を開始した。2022年度は望遠鏡のあるアタカマ地域で治安が悪化し、望遠鏡施設に泥棒が入るなどの事案が何回か発生した。メンバーの安全も考え、2022年度中の渡航や断念し、2023年度に予算を繰越、計画を延期した。2023年度はメンバーが3回のチリ渡航を行い、望遠鏡の再起動に向けた活動を行った。発電機・望遠鏡・ドームのメンテナンスを行った。また冷凍機を起動し、受信機の冷却試験なども行い、大きな問題がないことを確認した。以前から判明していた性能のよくないビームの部品を交換、電波スペクトルの取得までを行った。各デバイスのチェックを行い、観測開始に向けた問題点を整理した。 また高いデータレートに対応するため、NANTEN2システムのソフトウェアの更新作業を進めている。新システムのソフトウェアは概ね完成し、大阪公立大の1.85m望遠鏡を使ってデバッグを進めている。これが完了し次第、NANTEN2に固有の制御ソフトを新たに作成し、新システムへの移行に向けて準備が進んでいる。 ASTE望遠鏡を用いたCI輝線観測は、これまでにオリオン座分子雲のデータが公開されている。1-0と2-1の2輝線を用いることで、原子ガスの温度や柱密度が求められることがわかっている。ASTE望遠鏡は副鏡に断続的にトラブルが発生したため、観測時間が大きく制限された。来年度以降にさらにデータを取得する予定である。 一方、NANTEN2望遠鏡の安定的な運用のため、国立天文台のASTEとの協力を進めた。特に発電機とネットワークを共有する方向で検討を進めた。電力線とネットワークファイバーの埋設のための調査を実施し、サイトでの工事に向け計画を練った。
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Strategy for Future Research Activity |
いくつかのSNRに対し、COおよびCIの複数のエネルギー準位の輝線観測を行う予定である。NANTEN2望遠鏡は2024年度の受信機メンテナンスやソフトウェアの更新作業を7-8月ごろから開始し、9月ごろには新システムでのコミッショニング観測を開始する予定である。これにより、高い観測効率で広い範囲のサーベイが可能になる。また10月以降はネットワークも安定した接続が確保され、日本からのリモート観測が実現できる予定である。 ASTE望遠鏡は現在、メーカーによる副鏡トラブルの抜本的な対応が進められている。他のプロジェクトのための受信機搭載の予定もあるが、スケジュールが許すならばCIの観測を行う。これにより、原子ガスの柱密度分布を高い分解能で得ることができる。これまでHIで調べたガンマ線の2つの起源の分離法をCIを用いて行うためには、まずは予備的な解析をいくつかの電離ガス領域で行い、幅広い温度・密度のレンジで柱密度を精密に求める手法を確立しておく。これにより、上記の分離法の適用可能なSNRを、より遠方のものにまで広げる予定である。
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[Journal Article] Massive Star Formation in the Tarantula Nebula2023
Author(s)
Nayak Omnarayani、Green Alex、Hirschauer Alec S.、Indebetouw R?my、Meixner Margaret、Wong Tony、Chevance M?lanie、De Marchi Guido、Lebouteiller Vianney、Lee Min-Young、Looney Leslie W.、Madden Suzanne C.、Roman-Duval Julia、Fukui Yasuo、Hacar Alvaro、Jameson K. E.、Kalari Venu、Oudshoorn Luuk、Rubio M?nica、Sabbi Elena
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 944
Pages: 26~26
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] An ALMA Study of the Massive Molecular Clump N159W-North in the Large Magellanic Cloud: A Possible Gas Flow Penetrating One of the Most Massive Protocluster Systems in the Local Group2022
Author(s)
Tokuda Kazuki, Minami Taisei, Fukui Yasuo, Inoue Tsuyoshi, Nishioka Takeru, Tsuge Kisetsu, Zahorecz Sarolta, Sano Hidetoshi, Konishi Ayu, Rosie Chen C.-H., Sewilo Marta, Madden Suzanne C., Nayak Omnarayani, Saigo Kazuya, Nishimura Atsushi, Tanaka Kei E. I., Sawada Tsuyoshi, Indebetouw Remy, Tachihara Kengo, et al.
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 933
Pages: 20~20
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] The 30 Doradus Molecular Cloud at 0.4 pc Resolution with the Atacama Large Millimeter/submillimeter Array: Physical Properties and the Boundedness of CO-emitting Structures2022
Author(s)
Wong Tony, Oudshoorn Luuk, Sofovich Eliyahu, Green Alex, Shah Charmi, Indebetouw Remy, Meixner Margaret, Hacar Alvaro, Nayak Omnarayani, Tokuda Kazuki, Bolatto Alberto D., Chevance Melanie, De Marchi Guido, Fukui Yasuo, Hirschauer Alec S., Jameson K. E., Kalari Venu, Lebouteiller Vianney, Looney Leslie W., et at.
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 932
Pages: 47~47
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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