2022 Fiscal Year Annual Research Report
Diversity of cosmological standard candles probed by high-resolution X-ray spectroscopy of supernova remnants, galaxy clusters, and laboratory plasmas
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22H00158
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
山口 弘悦 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (00513467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 裕 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (10332165)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | X線天文学 / プラズマ / 多価イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
白色矮星を親星とするIa型超新星は、宇宙の標準光源として利用されながらも、顕著な多様性があることが知られる。本研究では、X線天文衛星XRISMを用いてIa型超新星残骸と銀河団を観測し、各天体の鉄族元素質量比を測定する。これによって、個々の白色矮星の爆発時の質量および中心密度とその平均値が明らかとなり、Ia型超新星に見られる多様性の正体が明らかになる。この研究を成功に導くには、XRISMが分離するL殻共鳴輝線の実験的な原子データが必要となる。そこで本研究では、プラズマ実験装置 「電子ビームイオントラップ(EBIT)」を利用して、鉄族元素L殻遷移の波長と遷移確率を高精度で測定する。この測定は、EBITを大型放射光施設 SPring-8 のビームラインに設置して実施する必要がある。 2022年度は、上記を目的としたSPring-8での実験を7月に実施した。但し、輸送中のトラブルにより真空装置に不具合が発生し、ビームタイムの期間に必要な真空度を達成できなかった。そこで年度の後半は故障部品の交換と改良を行い、EBITの性能回復を確認した。これに加えて、本実験で用いることを予定していた金属試料が入手困難となり、実験方法の変更を余儀なくされた。代替手段として、電子衝撃加熱による金属蒸発装置を導入し、固体金属から直接イオンを導入することとした。この装置についても、COVID-19の影響により調達が遅れたため、2022年度分補助金を2023年度に繰り越すこととした。 2023年度中には、金属蒸発装置に加えて、イオンの価数分布を測定するためのマイクロチャネルプレートを取り付け、試験運転を完了した。2024年度中に実施するビームライン実験に向けて、着実に準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初想定していた実験試料の生産中止と、代替手段となる金属蒸発装置の(COVID-19を原因とする)入手困難により、EBITの改良が遅れたため。但し、繰越期間である2023年度中には遅れをほぼ回復し、2024年度に行うビームライン実験に向けての準備が整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
L殻共鳴輝線の原子データを得るためのEBIT-放射光実験を2024年度6月末に実施する。また、本研究の最終目的である超新星残骸や銀河団の観測に用いるX線天文衛星XRISMが2023年9月の打ち上げに成功し、天体の観測を進めている。現時点ではマイクロカロリメータ検出器Resolveの部分的な不具合により、検出器の前面に取り付けられたゲートバルブが開放されていない。そのため、鉄族元素のL殻輝線を含むエネルギー帯域に感度を持たない状況となっている。一方で、2 keV以上の高エネルギーX線に対しては当初要求以上の分光性能を達成しており、鉄族元素のK殻輝線に対しては高い元素量決定精度を有する。そのため、今後はResolveの高エネルギー帯域のスペクトルを利用して科学目標を達成する方策も検討する。
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