2023 Fiscal Year Annual Research Report
Ocean turbulent mixing due to non-breaking surface waves; Dynamic similarity and climate impact around Japan
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22H00178
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉川 裕 京都大学, 理学研究科, 教授 (40346854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広瀬 直毅 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (70335983)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 海洋の水面波 / 渦対形成 / 海水混合 / 大気海洋システム / 日本周辺気候 |
Outline of Annual Research Achievements |
波成混合が気候に及ぼす影響を正しく評価するため、波成混合を精確に(近似せずに)再現する数値実験(波成混合実験)、その検証および補完のための室内実験、さらに波成混合が日本周辺気候へ及ぼす影響を評価するための数値実験(気候影響評価実験)を、前年度に引き続き実施した。 波成混合実験に関しては、本研究事業で購入したハイパフォーマンスコンピュータを用いて、水面波の波高や波長を変えた実験を前年度から継続して行った。その結果、分子拡散係数の1000倍にも達する混合が、波の軌道運動深度を超えて生じていること、その深度は波高に応じて深くなること、などを新たに見出した。また、乱流成分と波成分の分離を見直しを行い、乱流運動エネルギーの推定精度を向上させた。なお、前年度からの継続課題となっていた数値モデルコードの並列化も完成させた。 室内実験に関しては、超音波流速計と新規に制作したマイクロバブル発生装置を用いて、水面波が引き起こす乱流強度の計測に新たに取り組んだ。コルモゴロフの慣性小領域に対応するエネルギースペクトルの評価に成功するなど、波成乱流の強度を室内実験でも定量評価することが可能となった。これにより、波成混合実験を検証・補完する手法が新たに確立された。 気候影響評価実験に関しては、海洋大循環モデル(RIAM Ocean Model)に気象庁波浪モデルGPV(CWM)を境界条件として与え、黒潮域を想定した高分解能の数値実験を行った。混合層モデルとして波成混合を考慮した既存のスキーム(Babanin 2017)を新たに導入し、波成混合を考慮していない従来のスキーム(Noh and Kim 1999)と比較したところ、前者の方が2倍以上混合層が深まることを確認した。ただし、混合層深度の時間変化が逆位相になることもあり、今後パラメターのチューニングなどが必要であることも確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
波成混合実験に関しては、本研究事業で購入したベクトル・並列型ハイパフォーマンスコンピュータが本格的に稼働するようになり、多くの実験を行えるようになった。また並列化コードも完成させた。しかし、実験には長い時間を要することに加え、実験パラメターを変えた場合には初期値も変更する必要があり、最適な初期値を探る試行実験に時間を要するなど、想定以上の時間がかかる結果となり、実験結果の解析の時間が十分に取れなかった。一方、二つのトレーサーを用いて最小二乗法的に拡散係数を推定する手法や、乱流運動エネルギーの分離手法など、解析精度を向上させることに成功した。本課題の目標の一つである相似則には至っていないものの、2年間を経てその準備が整ったと言える。 室内実験に関しては、新たにマイクロバブル発生装置と超音波流速計を組み合わせて計測を試みたところ、試行錯誤の結果、乱流エネルギー散逸率を推定できるという予想以上の結果を得ることができた。これにより乱流強度の定量的な評価が可能となり、前年度までに確立した渦対構造の同定手法とあわせて、波成混合実験(数値実験)を検証・補完する手法を確立することができた。 気候影響評価実験に関しては、波浪の効果を組み込んだシミュレーションを行うだけでなく、既存のスキームではあるが混合層深度に及ぼす波の影響の評価と、現実海洋とシミュレーション結果を比較することまで実施できた。これらの点は想定上の進展であった。 以上を踏まえて、各課題とも凸凹はあるものの、総じて順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
波成混合実験に関しては、波長や波高だけでなく、水面に弱い風応力を与えた実験を新たに実施する。これまでの我々の研究により、砕波しない波による混合は、(風の有無に関わらず)海面応力とストークス速度分布により表現されることが明らかとなった。これを踏まえて、海面応力も新たなパラメターとして実験を行い、乱流や混合の強度のデータを整理し、波成混合の相似則についてさらなる検討を加える。 室内実験に関しても、水面に弱い風を吹かせて実験を行う。これまでと同様に、乱流強度、水温分布変化、渦対構造の抽出を行い、波成混合(数値)実験を検証・補完するデータを取得する。 気候影響評価実験に関しては、波浪モデルを導入して波浪データを同時にシミュレーションできるようにするだけでなく、波成混合の影響をより精確に表現するよう混合層スキームを修正し、既存のスキームとの比較を行うとともに、現実との比較も行い、日本周辺気候へ及ぼす影響の評価に着手する。 得られた成果をまとめ、国内外の研究発表大会や学術雑誌で公表する。
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Research Products
(3 results)